ツリー・オブ・ライフ(2011)
親から子へ受け継がれる神秘的な〈命の連鎖〉
伝説の巨匠テレンス・マリックが人間の在り方を問う
『天国の日々』『シン・レッド・ライン』で高い評価を受けていたテレンス・マリック監督は寡作の監督として知られていました。
2011年時点で映画監督として40年以上のキャリアを持ちながら、発表したのは本作を含め6作。(本作の後は2019年までの7年間で4作を発表しています)
寡作ながら伝説の巨匠として作品が待ち望まれる理由は、人間の本質を映し出すからでしょう。
時に残酷で理不尽な行いもする人間という生き物。人間とは何なのか。人はどう生きるべきなのか。本作でテーマにしたのはまさに人間の在り方です。
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【ストーリー】
仕事で成功しながらも、深い喪失感を抱く中年ジャック(ショーン・ペン)が両親と過ごした少年時代を振り返ります。
1950年代、テキサス州の田舎町で3人兄弟の長男として育ったジャック。慈愛に満ちた母は優しかったのですが、厳格な父(ブラッド・ピット)は支配的。父が子どもたちに厳しくしたのは、成功するために必要な「力」を付けさせるためでした。
ジャックは理不尽なまでに厳しく、利己的な父に反発しますが……。
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人は誰でも少なからず親の影響を受けています。人の存在自体が親なくしてはあり得ませんし、性格や生き方など、親との日々は人間形成の根源となります。そんな大切な日々の中に潜む葛藤を、マリック監督は胎児が宿る人間の体内や、ダイナミックで神秘的な自然の映像美などを交えて描き出し、観る者に自らの在り方を考えさせます。
自然ドキュメンタリーのような映像とジャックの少年時代の生活が淡々と紡がれるストーリーは説明的ではなく、難解に思えるかもしれませんが、神を信じる母が語る人生観、厳格な父がふと漏らした「俺のようになるな」など、心に染みる言葉が混迷の時代を生きる私たちに正しい生き方を示し、希望を与えてくれます。子どもを持つ親にはとくに胸に響くはずです。
〈命の連鎖〉をイメージした「ツリー・オブ・ライフ」。人間の神秘を感じさせる壮大な作品です。
- 発売日: 2013/01/23
- メディア: Blu-ray