映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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アレキサンダー(2004)

理想主義者アレキサンダーの波乱の生涯を
克明にたどったオリバー・ストーン監督の問題作

紀元前4世紀、人類初の世界征服を成し遂げたアレキサンダー大王の生涯を描いた本作は、本国ヨーロッパは元より歴史超大作にめっぽう弱いハリウッドもそっぽを向いた問題作となりました。

でも、オリバー・ストーン監督作ゆえ、さほど驚くことではありません。単純明快な娯楽作を望むなら期待はずれに終わるでしょう。

なにしろアレキサンダーマニア歴は少年時代に遡るというストーン監督。積年の思いをたっぷり込め、アレキサンダーの波乱の生涯を克明に辿り、謎めいた実像へ真剣に迫ります。

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【ストーリー】
アレキサンダーマケドニア王フィリッポス(ヴァル・キルマー)とオリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)のひとり息子。だが、暴君の父は家庭を顧みず、野心家の母は息子の王位継承に執心します。
傲慢な両親から愛ではなく、野望を注入されたアレキサンダーが歴史に名を残したいと望んだのは自然の流れだろう。やがてフィリッポスが暗殺され、20歳でマケドニア王となったアレキサンダーはペルシア帝国を滅ぼし、東方遠征を開始します。

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ガウガメラの戦いでの迫力ある戦闘シーン、フィリッポス暗殺の真相のミステリー、アレキサンダーの内面に迫る人間ドラマなど、さまざまなエピソードが一貫して語るのはアレキサンダーが大きな理想主義者であったということ。

そして、ストーン監督はアレキサンダーの英雄伝ではなく、大きな理想に掲げた人間が落ちぶれていく過程に的を絞ったのでしょう。

大きな理想を追うときにかならずついてくる問題があります。それは人です。

東西融合という素晴らしいビジョンを打ち立てながら、やることといえば、東へ進み、東洋人と結婚すること。計画性と行動の吟味、人をなおざりにした結果、アレキサンダーはどうなったか。アレキサンダーという偉人を例に取り、大きな理想を掲げる指導者へ痛烈な皮肉がこめられています。

理想主義者の堕落を描いた映画はあまたありますが、本作ほど小気味よいものはありません!


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