映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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キル・ビル vol.2

痺れるような緊張感がたまらない!
才気溢れるタランティーノが描く復讐劇の完結編

バイオレンスアクションフィルム『キル・ビルvol.1』を観た人は作品に対する賛否はともかく、クエンティン・タランティーノ監督の独創性に圧倒されたに違いありません。

愛する者を5人の殺し屋に奪われたヒロイン、ザ・ブライドの復讐劇は新たなステージに進みます。

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【ストーリー】
東京での復讐を終えたザ・ブライドは、残る標的を求めてテキサスの荒野に降り立ちます。そこにはストリップ・クラブの用心棒をするビルの弟バド(マイケル・マドセン)が酒浸りの日々を送っていました……。

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残る3人の標的は、『レボザア・ドッグス』の耳そぎ男、マイケル・マドセン(バド)、わずかに登場した前作で残忍な性格を見せつけたダリル・ハンナ(エル・ドライバー)、そして70年代のテレビシリーズ『燃えよ!カンフー』の伝説的ヒーロー、デヴィッド・キャラダイン(ビル)。

敵役となる俳優たちのキャリアを見れば、どんな壮絶な展開になるのか、いやが応にも期待が高まります。でも、前作をエスカレートさせるだけなら簡単です。タランティーノは多くの続編フィルムのような轍を踏みません。

『Vol.2』は刺激的なビジュアル、ナンセンスな舞台設定、古典的なユーモアなど、分かりやすさで惹き付けた『Vol.1』とは雰囲気がまったく違います。

時代や国籍を超えたジャンル映画の氾濫も鎮まり、マカロニ・ウェスタンに落ち着きました。前作に比べればトーンダウンの印象さえ与えますが、そこがお祭り騒ぎを繰り返すだけのハリウッドアクションとの大きな違いでしょう。

ホラー映画ばりの恐怖が味わえるバドとの攻防、女の恐ろしさを思い知らされるエルとの一騎打ちのバトル。相手が手強くなるに連れて高まるのは、しびれるような緊張感! ついに訪れる、一番憎むべきビルとの直接対決は意味深なセリフの応酬で不穏な雰囲気に包まれます。

リンチ事件の真相と復讐の真意について語るふたりに非情な殺し屋の面影はなく、ひとりの少女の父や母として、その複雑な胸中が語られます。それでも下される最後の裁きの切なさたるや、いつの間にか愛憎のラブストーリーとして完結していることに驚かされます。

才能に溢れたタランティーノの野心的な試みが注目されたシリーズですが、荒唐無稽な状況を無理なく受け入れさせたユマ・サーマンも絶賛されるべきでしょう。筋の通ったヒロイン、ザ・ブライドに息を吹き込み、現代版「恨み節」を見事に謳い上げました。


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