キル・ビル vol.1
タランティーノの映画愛と日本愛に溢れる
最高にはちゃめちゃでクールなアクション映画の前編
クエンティン・タランティーノ監督の映画が好きです。奇想天外なストーリー展開と生々しいバイオレンス・アクション。荒唐無稽で不快なのに、その唯一無二の物語世界に引きつけられてしまいます。
目を覆いたくなるシーンも多くて、『レボザア・ドッグス』の耳切りシーンなんて、いまだに見られません。
でも、鬼才タランティーノの描く想像を絶する出来事は、映画ならではの非日常を味わわせてくれます。《怖いもの見たさ》で好奇心を刺激されてしまうのです。
本作は2003年に公開された、タランティーノ監督が初めて手掛けたアクションフィルム。「ビルを殺せ!」という、威勢のいいストレートなタイトルに象徴される壮絶で痛快な復讐劇です。
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【ストーリー】
かつて所属した暗殺団の元ボス、ビル(デヴィッド・キャラダイン)に結婚式を襲撃されたザ・ブライド(ユマ・ザーマン)は、夫や出席者を皆殺しにされ、自身も脳天に銃弾をぶち込まれます。しかし、奇跡的に一命を取りとめ、4年間の昏睡状態を経て復活を果たします。
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懇願むなしくお腹の子供の命まで奪った極悪非道のビルと彼に協力した4人の暗殺者たちをザ・ブライドが次々に血祭りに上げていく、という恐ろしい物語です。
見どころとなる殺し屋同士の一騎打ちのバトルがそれぞれマカロニ・ウェスタン、カンフー映画、時代劇や任侠映画など、まったく異なるアクション映画のスタイルで描かれます。この画期的な趣向によって、当初は一作で企画された『キル・ビル』は急遽二部作として公開されることになったそうです。
それもそのはず、物語の中間に当たる第1部のクライマックス、東京でヤクザの女親分に上り詰めたオーレン・イシイ(ルーシー・リュー)との果し合いですでにバイオレンス描写は最高潮に盛り上がります!
日本刀による大乱闘では大勢のヤクザの子分たちの手足や首がバッサバッサと切り落とされ、グロテスクな殺戮絵図が広がります。確かにこんな調子で5人分のバトルを一挙に見せられたらたまりません。何より単なるアクション映画の見本市、悪趣味なB級フィルムにしないために配慮を施す時間が必要だったのでしょう。
『仁義なき戦い』や『修羅雪姫』を彷彿させるバトルシーンのほかにも、千葉真一演じる服部半蔵の復活、ユマやルーシーの日本語セリフにみるユーモアなど、ツッコミどころや、「なんでだろー」と思う要素が満載されています。
そんな荒唐無稽なシーンの数々にも怒るどころかもっと観たいとさえ思わせるのは、まさにアイデアの宝庫だから。CGによる斬新でクールな映像がもてはやされる一方で、映画が好きというだけで我流をとおして突っ走るその心意気に感服しました。