映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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シン・シティ 復讐の女神(2005)

鬼才ロバート・ロドリゲス監督ここに復活
とんでもなく刺激的なバイオレンス映画

かっこいい! 手足はもちろん、首も飛ぶ。肉体は切り刻まれ、内臓は噴き出し、男の急所は木っ端みじんに撃ち砕かれます!

猟奇的で痛すぎるシーンが満載された、とんでもないバイオレンス映画なのにもかかわらず、刺激的な映像世界に心酔してしまいました。

監督はハードアクション映画『デスペラード』で一躍脚光を浴びた鬼才ロバート・ロドリゲス。ほのぼのファミリー映画『スパイ・キッズ』シリーズを3作も作り上げ、路線変更を試みたのもほんのつかの間、本作でハリウッドの異端児ぶりに磨きをかけて復活しました。

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【ストーリー】
■エピソード1「ハード グッバイ」
強大な大男マーヴ(ミッキー・ローク)は酒場でゴールディ(ジェイミー・キング)という美女と出会い、ホテルで一夜を共にします。しかし、翌朝目覚めるとゴールディは死んでおり、警官が駆けつけてきます。マーヴはゴールディ殺しの罪を着せた犯人を突き止めようとしますが……。

■エピソード2「ビッグ ファイト キル」
過去の罪から逃れるために整形してシン・シティへ戻ってきた死刑囚のドワイト(クライブ・オーウェン)は無法地帯となった娼婦街を救おうとしますが、娼婦街を手に入れようとするマフィアに狙われてしまいます。

■エピソード3「イエロー バスタード」
老刑事ハーディガン(ブルース・ウィリス)は連続幼女殺人犯を追い詰め、少女ナンシーを救い出しますが、相棒のボブ(マイケル・マドセン)の裏切りにより連続幼女殺人犯の濡れ衣を着せられ、刑務所に収監されてしまいます。
しかし、数年後、大人になったナンシー(ジェシカ・アルバ)が狙われていることを知り、危険な敵「イエロー バスタード」に立ち向かうことに……。

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原作であるフランク・ミラーグラフィックノベルは、娼婦や犯罪者たちの住む裏社会シン・シティ(罪の街)が舞台とあって、絵もストーリーもハードボイルドなタッチが持ち味。だから、マジメに再現しようとすればするほど失笑を買いがちなハリウッド的アメコミ映画にしては絶対にいけない作品でした。

これまで映画化の話を断り続けてきたフランク・ミラーに対して、ロドリゲスはミラーを共同監督に起用することで、原作への「忠実性」を保証したそうです。そのために自身はアメリカ監督ギルドからの脱退を余儀なくされたそうですが、製作過程のルール無視は、何も独りよがりの映画を作ろうとするためのものではありません。

「忠実性」のために原作コミックの絵を直接CG処理した背景と、人間の俳優との完全デジタル合成により実現された映画版『シン・シティ』の世界。ラテン系のパワフルアクションが“おはこ”のロドリゲスも抑制を効かせた演出に終始します。

冒頭に挙げたように原作どおりの過激でグロテスクなバイオレンスシーンが連続するのですが、衝撃映像はキャメラワークやカラーリングにより、ことごとくぼかされており、決して観る者を不快な気分にさせることが監督の意図ではないと思います。

恐怖を忘れて目を奪われるのは、モノクロを基調にパートカラーを挿入した変幻自在の色彩の妙。アート性重視の姿勢は、版画のような様式美と称される原作コミックにも引けを取りません。

3人の男性キャラクター、シン・シティの最後の正義ハーティガン、傷だらけの純情マーヴ、クールな無骨者ドワイトを主人公にした3つのエピソードからなる哀愁漂う物語です。

ハーティガン、マーヴ、ドワイトはそれぞれ愛する女を守るために命をかけましたが、ロドリゲスもまたみずからの映像センスを守るために闘いました。

コミックが原作のため荒唐無稽な印象は免れませんが、無謀な戦いに挑む男たちの姿には、笑い以上にこみ上げるものがあります。

製作にはロドリゲス監督の盟友クエンティン・タランティーノが名を連ね、タランティーノ自身も一部のシーンを監督しています。

予測不能な男たちによる、超ワイルド&クールな世界は一見の価値ありです。


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シン・シティ(字幕版)