映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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ラストサムライ

ハリウッド製時代劇でよみがえった武士道精神
最後の侍たちの生き様に胸が熱くなる

2003年に公開された『ラストサムライ』は、ハリウッドが大胆にも時代劇に挑んだ画期的な映画でした。
野心的でチャレンジ精神あふれるトム・クルーズが製作・主演を務めた意欲作は、同然のことながら、公開前には懐疑的な声が圧倒的に多かったですが、熱血漢でまっすぐなトムの武士に対する熱い思いが伝わる良作に仕上がっています。

西洋文化に触れ、発展を求めて近代化を促進させた明治維新、日本の伝統として受け継がれてきた侍文化は消滅しました。人間が発展と引き換えに伝統をないがしろにする風潮は、時代や国を変えても改められない――。

ラストサムライ』では、この風潮に異議を唱えて立ち上がった侍たちの姿が描かれています。製作、共同脚本も手掛けた『戦火の勇気』のエドワード・ズゥイック監督もトム同様、思い入れたっぷりに、侍たちの生き様を畏敬の念を込めて見つめています。

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【ストーリー】
日本初の近代的軍隊を訓練するために来日したアメリカ軍のオールグレン大尉(トム・クルーズ)を中心にストーリーが展開します。彼は名誉のために戦ったインディアン討伐戦での勝利が実用主義や利己主義を生んだに過ぎないことを悔い、自暴自棄になっていました。軍隊の発展が侍の根絶を招いても、自分にはぴったりの役目と自嘲する――。そんな彼が武士道精神に触れます。
未熟な軍を率いたオールグレンは侍一族の長、細川勝元渡辺謙)との戦いに敗れてしまいますが、勝元は敵である彼を生かして村に連れ帰り、妹たか(小雪)の家に住まわせます。

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侍文化に息づく精神をじっくりと描き出し、オールグレンの共感を誘う村のシーンが秀逸。質素で堅実な村人たちとの暮らしはともすれば単調に映りがちですが、カルチャーギャップをユーモラスに描写するなど、工夫されています。

やがて勝元たちは侍の誇りと名誉をかけて政府に戦いを挑みます。
固い信念と厚い忠誠心、崇高な自己犠牲の精神など、みずからに備わる武士道精神だけをより所にして戦う侍たち。
ハンス・ジマーサウンドが盛り上がりすぎ、エピソードも美談すぎと、感動を煽りすぎるきらいがありますが、世界中の人がオールグレン同様、彼らの実直な生き方に共感するなら、日本人として、こんなにうれしいことはありません。

武士道精神という伝統を見事によみがえらせたメッセージ性の強いアクションフィルムです。


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