映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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運命の女(2002)

エロティックサスペンスの巨匠が描く不倫の果ての悲劇
リチャード・ギアダイアン・レインが熟練の技を見せる

幸せな家庭に恵まれながらも若い恋人へ走る妻、そして妻の不倫を知った夫

『ナインハーフ』(’86年)、『危険な情事』(’87年)など、エロティックサスペンスでならしたエイドリアン・ライン監督が『運命の女』で描くのは、不倫の果ての悲劇です。

幸せが永遠に続くと思っていた平凡な夫婦の絆が緩やかに崩壊していくさまが怖いです。

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【ストーリー】
ニューヨーク郊外に暮らす専業主婦コニー(ダイアン・レイン)は、実業家の夫エドワード(リチャード・ギア)と8歳のひとり息子チャーリー(エリック・ペア・サリヴァン)との平凡な暮らしに満足していました。
そんなコニーがマンハッタンでフランス人青年ポール(オリヴィエ・マルティネス)に出会い、情事を重ねるようになります。心の片隅では家族へ変わらぬ愛を抱きながらも、古本のディーラーをするポールの詩的で甘美な世界にのめり込んでいくコニー。
一方、妻の嘘に気づいたエドワードはその原因を確かめる勇気もないまま、疑念と不安だけを膨らませていきます。
だが、探偵に調査を依頼し、ついにコニーの裏切りを知ったエドワードはポールのアパートに乗り込みます。

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同じ不倫を題材にした『危険な情事』を始め、『ナインハーフ』『ロリータ』など、常人には理解できない、いびつな愛の形を斬新な視点と大胆な性描写で描いてきたライン監督作の中ではマイルドな作品といえるでしょう。

その変化はこの手の映画、とくにライン作品では期待されてきたラブシーンにも表われています。コニーの表情と、ポールの指先の動きだけで見せる愛情表現のなんと官能的なこと。衝撃性とかけ離れた繊細な描写はとても美しいです。

前半はコニー、後半はエドワードの心の動きがキーになる物語において、『コットン・クラブ』以来18年ぶりの共演となるリチャード・ギアダイアン・レインが熟練の技を見せています。

プレイボーイ役が十八番のリチャード・ギアが寝取られ亭主の悲哀をささいな表情やしぐさで表現すれば、アイドル女優から柔軟に脱皮したダイアン・レイン性に目覚めた妻の苦悩を美しい体全体を使って明らかにします。そんな大胆かつ繊細な演技により、米アカデミー賞の主演女優賞候補となりました。

ライン監督が緻密に練り上げたキャラクターはハリウッドのトップをひた走ってきた両ベテラン俳優にとっては革新的なものになり、そのキャリアにますます弾みをつけました。


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運命の女 (字幕版)