映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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ヴィレッジ(2004)

禁断の森の謎に挑むシャマランミステリー
大どんでん返しの結末よりも過程が大事

「なぜ少年は霊が見えるのか」(『シックス・センス』)、「なぜ男は乗客全員死亡の列車事故でたったひとり生存したのか」(『アンブレイカブル』)、「なぜミステリーサークルが出現したのか」(『サイン』)。

世界的な大ヒットを記録した『シックス~』以降、理屈では説明のつかない謎に取り組み、独特の答えを導き出してきたM.ナイト・シャマラン監督。その答えがあまりに予想外なために、いつしか大どんでん返しの結末ばかりが注目されるようになってしまいました。

でも、シャマランミステリーの本質は、謎に苦悩する人々の姿に肉薄した過程にこそあるのでしょう。

ミステリーホラー『ヴィレッジ』で人々は禁断の森の謎に直面します。

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【ストーリー】
1897年、ペンシルバニア州。深い森に囲まれた小さな村には奇妙な掟がありました。
《決して森に入ってはいけない》。もし掟を破れば、森に棲む邪悪な〈彼ら〉が村に災いを起こすだろう。住民たちはこの恐ろしい言い伝えを信じ、平和な生活を守るため村から一歩も出ることはありませんでした。
そんななかで、村の子どもが町に薬を買いに行けなかったために命を落としてしまいます。ルシアス(ホアキン・フェニックス)は理不尽な掟を打ち破るべくは森を抜ける決意を固めますが、その矢先にアイヴィーブライス・ダラス・ハワード)に横恋慕するノアに刺されて瀕死の重傷を負ってしまいます。
すると、盲目の娘アイヴィーが愛するルシアスの命を救うため森の中へ入ることに……。

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見えざる〈彼ら〉に常に見張られている村。村の子どもの葬儀シーンで始まる不吉な物語は、まるで〈彼ら〉の怒りを恐れて、言動を慎みながら生きる村人たちの張りつめた緊張感と底知れぬ不安感を表わすように、不穏な静けさの中で淡々と進んでいきます。

しかし、不気味さを醸すのは、閉ざされた生活を受け入れた村人たちのほうでしょう。

森へ行きたいと望む血気盛んな若者ルシアス(ホアキン・フェニックス)、密かに森に入る精神不安定な若者ノア(エイリアン・ブロディ)、徹底して森を拒む村の長老たち(ウィリアム・ハートシガニー・ウィーバー)など。だれが予想外の行動を取るのでしょうか? 意外性に富んだ個性派俳優の共演により、あらぬ想像が膨れ上がっていきます。

恐怖に震えながらも茂みの向こうへと進むアイヴィー。物語のメインイベントとなる森の中での恐怖シーンは圧巻です。

村の日常を描いた前半に仕掛けられた伏線もうまくつながっています。

とはいえ、森の謎に対する答え=結末については観る人それぞれ思うところがあるでしょう。

だからこそ、曰くあり気な展開を創造できるシャマランの構成力のすごさに驚かされ、彼の作品の虜になってしまうのです。

作品時間108分、そのうち100分は絶対満足できることを保証します。それだけで十分です!


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