映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

人生に迷えるアラフィフ女性が、映画を通して人生について考える。ネタバレなしの映画レビューサイト。

Shall We Dance?(2004)

主役のイメージチェンジは大目に見よう
オリジナルへの忠実さを心がけたハリウッドリメイク版

幸せながらも平凡な生活にどこか満たされない思いを抱く中年サラリーマンが心の隙間を埋めるために選んだのは社交ダンスでした。

中年サラリーマンが社交ダンスに打ち込むことで人生の輝きを取り戻していく姿を描いた邦画『Shall we ダンス?』(’96年)は、彼を囲む個性豊かな社交ダンス教室の仲間たちや愛らしい家族の存在もあって、何度見ても心地よい感動に包まれます。そんな近年稀に見る邦画の佳作がハリウッドでリメイクされました。

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【ストーリー】
遺言書作成専門の弁護士ジョン・クラーク(リチャード・ギア)は家庭にも仕事にも恵まれていましたが、常に死を見越した仕事のせいか人生に虚しさを覚えています。ジョンはいつも通勤電車から見える社交ダンス教室の窓辺にたたずむ女性(ジェニファー・ロペス)が気になっていましたが、ある日、思い立ち社交ダンスを習いはじめます。

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役所広司が演じる中年サラリーマンはリチャード・ギアが演じる弁護士へ、バレリーナ草刈民代が演じた社交ダンス教室の女性講師はヒップホップダンスが得意なジェニファー・ロペスへ。主役の大胆なイメージチェンジはさておき、ストーリーはほぼオリジナルに忠実です。

竹中直人が演じたラテンダンスに情熱を燃やす薄毛の男性リンク(スタンリー・トゥイッチ)や、渡辺えり子が演じた貫禄たっぷりのおばちゃんダンサーのボビー(リサ・アン・ウォルター)はそっくりで楽しいです。

主人公と女性講師のほろ苦い関係、社交ダンス大会出場に向けた特訓、見せ場となる大会でのハプニング、主人公一家の再生を描くラストまで、これほどオリジナルをいじっていないリメイク作品も珍しいのでは? と思われます。

でも、オリジナルを無視したリメイク作品が多いなか、忠実すぎて物足りなさを覚えるのはわがままでしょうか? エピソードやキャラクターのすべてにオリジナルの影がちらつき、わざわざリメイク版を観る必要がないのでは……、とさえ思えてきます。

そんなリメイク版らしさが出るのはラスト。役所広司に完敗していたギアにぴったりの舞台が用意され、ハリウッド流の賑やかなダンスシーンで幕を閉じます。

オリジナル版と同様、温かな気持ちになれる、上出来のリメイク作です。


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シャル・ウィ・ダンス?(吹替版)

わんわん物語(1955)

愛らしい犬たちの恋と友情と冒険を描いた
ロマンティックなディズニーアニメーション

1955年に製作された15作目のディズニー長編アニメーションは、優しい飼い主のもとで育った箱入り娘のコッカー・スパニエル犬レディと、町外れで自由気ままに生きる陽気な野良犬のトランプが織りなすロマンティックな恋物語

レディの世話を焼く紳士的なスコッチテリア犬のジャックや、従順だが猟犬の誇り高いブラッドハウンド犬のトラステゥイ、ほかにもマルチーズ、チワワなど個性豊かな犬が登場し、犬たちの生きる世界と素晴らしい友情が描かれています。

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【ストーリー】
ニューイングランドに住むディア家の夫ジムは、妻ダーリングへのクリスマスプレゼントにコッカー・スパニエル犬のレディを贈ります。2人はレディをとてもかわいがっていました。やがてディア家に男の子が生まれ、レディもジミーと名付けられた赤ちゃんを大切にしていました。
そんなある日、夫婦が旅行中にベビーシッターとして、セーラおばさんがやってきます。レディはネコ好きで犬嫌いのセーラおばさんに冷たくされたことから、家を飛び出してしまいます。そして、町で自由を愛する野良犬トランプに出会い、恋に落ちますが……。

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無類の犬好きだったウォルト・ディズニーの企画で生まれた本作は、既存のおとぎ話や小説をモチーフにしているディズニー作品と違って、完全なオリジナルストーリーです。そのため、アニメーターたちはビジュアル面で自由に発想を膨らませることができたそうです。

1950年代に台頭したシネマスコープを初めて取り入れた、艶やかなレディの毛並み、勇敢なトランプの凛とした表情、クライマックスの疾走シーンなど、リアルで躍動感あふれる犬たちの描写は必見です。

そして、スパゲッティを食べながら、少しずつ近づいていくレディとトランプのキスシーンも見どころの一つです。このシーンで流れる主題歌『ベラ・ノッテ』(イタリア語で「美しい夜」という意味)はとても素敵な歌で、ロマンティックなシーンを盛り上げます。

私の大好きな山下達郎さんがアカペラで『ベラ・ノッテ』をカバーしているのですが、「幼いころに初めて観たディズニー映画が『わんわん物語』で、とても印象に残っている歌です」とライブで話していました。ライブでも、自身の多重録音によるアカペラをバックに歌ってくれて、本当に素晴らしかったです。山下達郎さんによる『ベラ・ノッテ』は『わんわん物語II』(2001年)の主題歌になっています。

そして、『ベラ・ノッテ』はスウェーデンでは、なぜかクリスマスソングの定番となっているそうで、山下達郎さんも自身のクリスマスアルバム『Season's Greetings』に収録しています。

クラシックなディズニーアニメとマジカルな山下達郎さんの歌声。心が洗われるような映像や音楽とともに、静かにクリスマスの夜を過ごしてみるのもいいのではないでしょうか。

I wish you a Merry Christmas!!!


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グリンチ(2000)

見事な特殊視覚効果技術が生み出した
ファンタジックで楽しいクリスマスの物語

イタズラ好きでひねくれ者のグリンチクリスマスが大嫌い。だから、クリスマスをこよなく愛するフーヴィルの住人フーたちを悲しませるためにクリスマスを盗み出そうとします――。

世界中で親しまれているドクター・スースの寓話グリンチはどうやってクリスマスを盗んだか』を『アポロ13』(’95年)のロン・ハワードが実写で映画化しました。

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【ストーリー】
フーヴィルの近くの険しい山の頂に、全身緑の毛で覆われた変な生き物グリンチジム・キャリー)が犬のマックスとひっそり暮らしていました。
実はグリンチもフーフィルの住人でしたが、特殊な見た目をしていた上に、意地悪だったため、住人たちに仲間外れにされ、山へ逃げ込んだのです。
それ以来、グリンチの性格はますますひねくれ、「世界で一番嫌いなものはクリスマス!」と触れて回り、ますます嫌われ者に。
そんなグリンチが偶然、町の女の子シンディーの命を救ったことをきっかけに、フーヴィルで行われる「千年祭」の名誉会長に任命されてしまいます。

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まるでキャンディー箱をひっくり返したようなカラフルな街並み、丸みを帯びたファンシーな建物、愛くるしい小動物を思わせるキャラクターなど、スーシアンスタイルの楽しいイメージがぎっしり詰まったメルヘンの国の物語は、2000年全米興行収入第1位を記録するほど、大ヒットを記録しました。

そして、本作が獲得したもうひとつの栄誉が第73回アカデミー賞メイクアップ賞です。

6度目のオスカー受賞となる特殊メイクの巨匠リック・ベイカー率いるシノベーションスタジオはなんと1日に90人以上のキャストを、ファンタジックなキャラクターに変身させることになり、過去最高だった『猿の惑星('68年)をしのぐメイクアッププロジェクトをこなしたそうです。

そして、グリンチに扮したジム・キャリーの魅力をそのまま残す全身メイクアップの成功も評価されました。

陽気でハチャメチャなマスク男を熱演し、一躍脚光を浴びたジム・キャリー十八番の顔芸を駆使して、サービス精神たっぷりにくせ者キャラクターを活き活きと蘇らせています。


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決算! 忠臣蔵(2019)

赤穂浪士たちは、討ち入りのお金に困っていた?!
人気時代劇「忠臣蔵」の舞台裏をユーモラスに描く

江戸時代、47人の赤穂浪士たちが無念の死を遂げた藩主・浅野内匠頭のために、命をかけて仇討ちを果たしました。このドラマティックな史実は、「忠臣蔵」と名付けられ、文学、歌舞伎、映画など、さまざまなメディアで語り継がれています。

討ち入りに至る侍たちの苦悩や苦難を描いた人間ドラマは、多くの日本人に感動を与えてきました。が、しかし! 現実的な問題として、討ち入りには多額のお金が必要でした!

本作は、そんな討ち入りの予算捻出にまつわる騒動を描いたコメディタッチの「忠臣蔵」です。大石内蔵助が遺した、いわゆる“収支決算報告書”を分析した、東大教授で江戸時代研究の第一人者・山本博文の著書『「忠臣蔵」の決算書』を基に、リアル過ぎる「忠臣蔵」の実情を描いた、痛快エンターテイメントです。

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【ストーリー】
気性は激しいものの、火消しの浅野として、江戸市民に人気の浅野内匠頭阿部サダヲ)が賄賂まみれの幕府の重臣吉良上野介に斬りかかり、即日切腹となってしまいます。
その後、赤穂藩は取り潰され、筆頭家老の大石内蔵助堤真一)は、浅野家復興を願い出て、残務整理に励んでいました。
内蔵助は再興費に頭を抱えますが、幼馴染の勘定方・矢頭長介(岡村隆史)の力を借りて、浅野の妻・遥泉院(石原さとみ)の持参金800両(9500万円)をかき集めます。

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現在の兵庫県にある赤穂藩から江戸への旅費や、討ち入りを希望して江戸に残る浪士たちの家賃、さらには討ち入り道具の費用など、なんだかんだで、どんどんお金が減っていく過程がユーモアたっぷりに描かれます。

内蔵助を始めとする忠義な侍たちは、実は、金に無頓着で、律儀な勘定方を困らせてばかり。まるで現代の企業のような、“営業”と “経理”との攻防が繰り広げられていた、というのは知られざる舞台裏でしょう。

終始、お金のことで揉めている赤穂藩士たちは、一見、頼りなげですが、人間味に溢れています。堤真一とともにW主演を務めたナインティナイン岡村隆史を始め、西川きよし木村祐一など、吉本興業所属の芸人たちが多数出演。リアルな関西弁を駆使して、“せこく”て“熱い”男たちに息を吹き込みました。

浜田岳や荒川良々など、俳優たちのコメディ演技も光り、終始、笑いの絶えない展開ですが、討ち入りまでの侍たちの葛藤もきちんと描かれています。

特に、討ち入りを決める理由のひとつと言える事件の顛末には驚きとともに、熱いものがこみ上げます

監督は、『アヒルと鴨のコインロッカー』『殿、利息でござる!』など、ユニークな作品で知られる中村義洋。本作のノベライズも手がけています。


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ゴースト/ニューヨークの幻(1990)

たとえ姿は見えなくても、愛する人を守りぬく
美しくも、切ない愛を描く名作ラブストーリー

私のラブストーリー映画“ベスト3”からの続きです。そして、第1位は……!!!

【ストーリー】
舞台はニューヨーク。温厚で誠実な銀行員サム(パトリック・スウェイジ)と、陶芸家のモリーデミ・ムーア)は仲睦まじいカップルでした。しかし、ある夜、2人はデートの帰りに暴漢に襲われ、サムが命を落としてしまいます。
ゴーストとなり、モリーのそばにいたサムは、モリーの身に危険が迫っていることを知り、インチキ霊媒師オダ=メイ(ウーピー・ゴールドバーグ)の力を借りて、モリーを救おうとしますが……。

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世界的な大ヒットを記録しましたが、公開時、日本では口コミで評判が広まりました。ゴーストとなったサムはモリーのそばにいるのに、モリーには彼が見えません。そんなもどかしくて、切ない状況を甘いメロドラマにするのではなく、サムを殺した犯人を捜すミステリータッチの展開で引き付けます。

そして、その犯人捜しに大活躍するオダ=メイを演じたウーピー・ゴールドバーグがユーモラスで、本当に良い味を出しています。スティーブン・スピルバーグ監督作『カラー・パープル』(’85年)の主演でデビューを果たしたウーピーですが、本作で世界的なブレイクを果たしました。

ブレイクしたと言えば、主演の2人も本作で一気にスター俳優になりました。中でもショートカットのデミ・ムーアのかわいらしさに驚いた人も多いのではないでしょうか。うるんだ瞳、憂いを帯びた表情で、恋人の死に打ちひしがれるモリーをひたむきに演じていました。

謎や笑いをちりばめて、テンポよく進むストーリーはサム殺しの謎が解けた後、感動のクライマックスが訪れます。モリーが姿の見えないサムの存在をどうやって知るのか? シンプルなのに、あっと驚かされる仕掛けは、思い出しただけでも、ウルっとしてしまうほど。それだけ理不尽に引き裂かれたサムとモリーの姿に肩入れしてしまいました。

特筆すべきは、クライマックスの陶芸シーンの、なんとロマンティックなこと! オールディーズの名曲『アンシェント・メロディ』を音楽に使ったことも、本作が多くの人々の心に残る作品になった理由でしょう。

キャスト、ストーリー、映像、音楽すべてが完璧な映画だと思います。


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プリティ・ウーマン(1990)

はつらつとしたジュリア・ロバーツの魅力全開!
憧れのシチュエーションが満載されたシンデレラストーリー

私のラブストーリー映画“ベスト3”からの続きです。第2位は……、

【ストーリー】
ウォール街の狼」と呼ばれる敏腕実業家エドワード・ルイスリチャード・ギア)は、出張先のロサンゼルスで、ひょんなことから売春婦のヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)と出会います。
そして、仕事を成功させるため、買収予定の会社社長との会食に女性を同伴する必要に迫られたエドワードはロス滞在中の6日間、ヴィヴィアンと3000ドルで契約します。

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マイ・フェア・レディ』をベースにした物語は女性が憧れるロマンティックなラブストーリーになっています。

ハイソなビバリーヒルズを舞台に描かれるのは、クールなエリート実業家と、彼にはまったく不釣り合いな売春婦との身分違いの愛の行方です。

始めはお金の関係と割り切っていた2人でしたが、過酷なビジネスの世界で生きるエドワードは、自分に正直に生きる、屈託のないヴィヴィアンに安らぎを感じ、ヴィヴィアンは孤独で寂しげエドワードに惹かれていきます。

しかし、「女性を不幸にする才能がある」と言うエドワードは、ヴィヴィアンの愛に応えようとせず、契約終了の日が訪れます……。

ハリウッドきっての二枚目俳優リチャード・ギアは当然ハマり役なのですが、本作を特別なラブストーリーにしたのは、輝くような笑顔が魅力的ジュリア・ロバーツの存在が大きいでしょう。

1988年に映画デビューをしたジュリアは6人の女性の群像劇『マグノリアの花たち』(‘89年)で障害を乗り越える女性という難役に挑み、ゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞。そして、女優歴3年で本作のヒロインに大抜擢され、一気にスターダムを駆け上がりました。ジュリア自身も映画さながらのシンデレラストーリーを体験することになったなんて、「何と夢のある映画なのか!」と感慨深いです。

高級ホテルのペントハウス、イチゴ入りのシャンパン、ビバリーヒルズでのウィンドーショッピング、そして、レンガ造りのアパートのらせん階段を使ったラブシーン……。陽光まぶしいロサンゼルスならではの、明るく、オシャレなシチュエーションは、観ている人々も、キラキラしたシンデレラストーリーの世界へ誘ってくれます。

そして、何といっても、忘れてならないのは、1964年に発表されたオールディーズの名盤『プリティ・ウーマンの主題歌。特徴的なギターのイントロから始まるレトロポップなメロディと、ナンパ男の情けなさをテーマにした歌詞は映画の世界観にぴったりです。

どこまでも明るく、ポジティブでハッピーな気分になれる作品です!


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ボディガード(1992)

ケビン・コスナーホイットニー・ヒューストン
人気絶頂の2人がまぶしい王道ラブストーリー

私のラブストーリー映画“ベスト3”からの続きです。まずは第3位から……、

【ストーリー】
かつてロナルド・レーガン米大統領シークレットサービスをしていたフランク(ケビン・コスナー)は脅迫状が届いた人気歌手レイチェル・マロン(ホイットニー・ヒューストン)のボディガードを依頼されます。
しかし、当のレイチェルやスタッフたちには危機感がなく、フランクを邪魔者扱いする始末。呆れたフランクはボディガードを降りようとしますが、フランクがレイチェルの危機を救ったことから、2人は距離を縮めていきます。そして、一夜を共に過ごします。
ところが、依頼人と関係を持ったことを後悔したフランクはレイチェルと距離を取ります。
フランクに突き放されたレイチェルは当てつけのように身勝手な行動をしますが、脅迫電話を受け、激しく動揺するレイチェルを救ったのはフランクでした。

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ブライアン・デ・パルマ監督の犯罪アクション『アンタッチャブル』(’87年)での正義感溢れるエリオット・ネス捜査官役で一躍脚光を浴びたケビン・コスナーは、その後、監督・主演を務めた『ダンス・ウィズ・ウルヴス』(’90年)がアカデミー賞作品賞を受賞するなど、ハリウッド屈指の人気俳優になりました。

ダンディで渋くて、カッコいい! そんなケビンが満を持してのラブストーリー映画出演で、陰ながら女性を守るボディガーを好演し、さらに人気を高めました。

でも、本作以降も、主演作が毎年公開され、『ウォーターワールド』(’95年)や『ポストマン』(’97年)といった大作を監督したケビンですが、作品の評価は徐々に下降し、正直言って、あまりパッとした活躍がないのは残念なところ。この『ボディ・ガード』がケビンにとっては、キャリアの絶頂と言えるのではないしょうか。

といっても、2000年代以降はクセの強い作品への出演が多く、ラブストーリーにはほとんど出演していないので、あまりハリウッド的王道映画には興味がないのかもしれません。そういう意味でも、本作のクールな好漢は貴重だと思えます。

ヒロイン役には、R&Bの歌姫ホイットニー・ヒューストンが抜擢され、映画女優デビューを飾りました。私も高校時代には、彼女のデビューアルバム『そよ風の贈りもの』(’85年)、『ホイットニーII』(’87年)を聴きまくり、ソウルフルな美声に痺れまくっておりました。

本作も、ホイットニーの歌う主題歌『I Will Always Love You』が映画を活き活きと輝かせ、多くの人々の心を捉えました。特にフランクがレイチェルを命がけで救うクライマックスシーンは絶妙なタイミングでサビがかかり、ドラマチックな名シーンとなっています。ケビン・コスナーがイイ男過ぎるベタベタな演出ですが、何度観ても息をつめて、見入ってしまいます( ´艸`)

ちなみに、私はサントラに入っているアップテンポな『I am every woman』が大好きです! 

脅迫事件の真相にはちょっとご都合主義的な面もありますが、フランクとレイチェルのすれ違いの愛を描くもどかしい展開が見どころの、“ザ”・ラブストーリーです。2人の愛の行方がどうなるのか? “これぞ、大人の恋”と思わせる、さり気ないラストも私は気に入っています。

ただ、一つ残念なのは、本作出演直後に結婚し、不遇の私生活を送ることになったホイットニーが2012年、48歳の若さで急逝してしまったことです。ホイットニーがまばゆいばかりのスポットライトの中で歌っているシーンは、今観ると、ちょっとだけ切ない気分になります。ケビン・コスナーは彼女の葬儀で17分に渡る弔辞を読んだそうです。

自らを投影したようなスター役に挑戦し、素敵な映画と音楽を遺してくれたホイットニーに心から拍手を贈ります。


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