映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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モンスターズ・インク

これぞピクサー・マジック! 
世界中を笑いと感動の渦に巻き込むフルCGアニメ

1人で眠る子供たちにとってモンスターは大敵。夜中に突然クローゼットから現われ「ガオーッ」とひと声、たちまち幼気な子供たちを恐怖のドン底に突き落とす。ところが、そんな嫌われ者の役回りがモンスターのお仕事だとしたら……。

2001年に製作されたピクサー・アニメ第4弾は子供の悲鳴を町のエネルギー源にするモンスター世界で繰り広げられるファンタジーコメディ。

実はモンスターも子供を怖がっていたというユニークな発想から生まれたのが、モンスターの勤める〈モンスターズ・インク(株式会社)〉です。

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【ストーリー】
物語前半では、高い悲鳴供給率を誇る同社のエリート、毛むくじゃらの巨大モンスター、サリーと彼の仕事をサポートする同僚にして大親友のひとつ目モンスター、マイクなど、グロカワ系のモンスターたちが営業成績からアフター5のデートのことまで気にしつつ人間さながらに日夜仕事にいそしむ姿が実にユーモラスに描かれます。
そんなモンスターの世界へ迷い込んだのが、まだ言葉も話せないよちよち歩きの2歳の女の子、通称「ブー」。サリーとマイクはブーを人間の世界に送り返そうとしますが、ブーが迷い込んだのは偶然ではありませんでした。
さまざまな邪魔者が現われてブーの帰還を妨害し、ついにはモンスターズ・インクの陰謀を暴くアクションアドベンチャーに発展します。

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笑いとスリルの後にやって来る心地よい涙。起伏に富んだストーリーテリングにシビレるのは、オモチャや昆虫という多くの人にとっては子供時代の愛玩物に過ぎないものを主人公にした前3作と同様に、大人になれば忘れ去られるものへ愛惜を込めた優しい眼差しが根底にあるからでしょう。

明るいパステル調で描かれたモンスターたち、柔らかな日差しで包み込まれたモンスターの工場など、美しく洗練された映像からもその真摯な思いが伝わります。

そして、笑えば天使、泣けば悪魔に早変わりする天真爛漫さで「子供は天からの授かり物」との例えがピッタリなブーに、「触らぬ神に祟りなし」とばかりに戦々恐々とするサリーとマイク。運命のいたずらで巡り合い、いつしか生まれた〈愛おしい〉という感情だけで結び付けられる3人のキャラクターの表情の変化が素晴らしい!

〈純粋な心を持ち続けるには?〉。純正ディズニーキャラからは聞き飽きたこの普遍的な問いかけをメイド・イン・ピクサーの愉快で不思議なモンスターが体当たりで教えてくれます。

2001年アカデミー賞では新設されたばかりの長編アニメーション部門ほか4部門でノミネート(主題歌賞を受賞)。批評的にも大成功を収めました。

しかし、2001年公開当時の驚異的な人気は、同時テロに衝撃を受けた人々が愛らしいアニメーションに癒しを求めた結果というだけではないでしょう。

共にオスカー戦線を争っていたドリームワークスのフルCGアニメ『シュレック』で徹底的に皮肉られたファンタジックな理想主義もまんざらではないと思わせます。

これぞピクサー・マジック! 本格的なピクサー時代の到来を告げた秀作です。


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