映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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ドーン・オブ・ザ・デッド(2004)

無限に増殖するゾンビの恐怖が復活した
でも本当に怖いのはゾンビよりも人間たち

本作はジョージ・A・ロメロの傑作カルトホラー『ゾンビ』(’78年)のリメイクです。

謎の感染症が突如発生、一度死んだ感染者がおぞましいモンスターとなってよみがえり、未感染の人間たちに襲いかかります。

無限に増殖するゾンビの恐怖が、2004年、約25年ぶりに復活しました。

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【ストーリー】
看護婦のアナ(サラ・ポーリー)はいつものように病院の勤めを終えて家路につき、夫ルイス(ジャスティン・ルイス)と情熱的な愛の営みを交わして眠りにつきました。
しかし、平凡ながらも幸せな日常は夜明けとともに消え去ります。
隣家の少女ヴィヴィアンが2人の寝室に現われ、ルイスの咽を一気に掻ききります。出血多量で息絶えたルイスでしたが、すぐに人間とは思えない異様な姿で息を吹き返すと今度はアナを狙います。
なんとか屋外に逃げ出したアナは、変わり果てた住民が殺戮を繰り広げる町の光景に怯えながらも無我夢中で車を走らせます。

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オリジナル以降、さまざまなホラー映画が作られ続け、モンスターたちも飽和状態。特殊メイクを施したゾンビのアップにさほど恐怖を感じないですが、その分、デジタル技術を駆使したスピード感と集団のパワーで圧倒します。

新進気鋭のCM監督として注目を集めていたザック・スナイダー監督が先鋭的かつスタイリッシュな映像で迫り来るゾンビの恐怖を磨き上げました。

アナが途中で出会った4人の男女とともに逃げ込んだショッピングモールが血みどろの惨劇の舞台になります。

頭を銃でぶっ放さなければ死なないゾンビを相手にしたバトルは悪趣味の極みですが、これが死に直面した人間たちの素直な反応であることは理解できるでしょう。「生きるために相手を殺す」。戦争ではまかり通ってきた、恐怖のセオリーをブラックユーモアたっぷりに実行します。

消費文明を風刺したオリジナル同様、ショッピングモール内の人間描写が傑作です。

食料も洋服も欲しい物は何でも揃う鉄壁の要塞で、人々は悲惨な現状を忘れてくつろいでいました。男たちは屋上から地上のゾンビ相手に射撃遊びに興じ、アナでさえ愛する夫を亡くした悲しみなどとうに忘れたかのように楽しげです。

ゾンビはあくまで脇役に過ぎません。本当に怖いのは、心の痛みを感じない自分本位な人間たちのほうなのだから。


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ドーン・オブ・ザ・デッド (字幕版)