映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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PLANET OF THE APES/猿の惑星(2001)

鬼才ティム・バートンだから為せる
衝(笑)撃的なリ・イマジネーション版『猿の惑星

ダーク・ファンタジーの鬼才ティム・バートンが2001年、古典SFの名作『猿の惑星』をリ・イマジネーション(再創造)版として復活させました。

1968年に公開されたオリジナル版は、猿が人間を支配する斬新な舞台設定や未来世界の真実を描いた驚愕のエンディングなど、社会風刺的な要素が受け、センセーションを巻き起こしました。

それから30年以上の時を経て、時代の空気や人々の価値観が様変わりし、さらに、CG全盛になった映画製作や映画の捉えられ方が多様化されたなか、独特の感性でファンタジー世界のダークサイドを描いてきた鬼才は、古典SFの傑作として名を残す本作を、“かなりユニークな作品”に仕上げました。

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【ストーリー】
2029年、人類は調教したチンパンジーを相棒に宇宙開発を進めており、深宇宙に位置するスペース・ステーション、オベロン号にも調教中のチンパンジーが多数乗船していました。
あるとき、惑星間の奇妙な異常が確認されたためチンパンジーパイロット、ぺリクリーズを偵察ポッドに乗せて惑星に向かわせますが、磁気嵐に巻き込まれたポッドが行方不明になってしまいます。
宇宙飛行士のレオ・デイビッドソン大尉(マーク・ウォールバーグ)はチンパンジーの能力に懐疑的だったものの、パイロット仲間を助けるため上官の制止を振り切り惑星に飛び出します。
しかし、彼もまた磁気嵐に巻き込まれ超スピードで時空を超え、やがて密林のジャングルの中の沼地に墜落してしまいます。
水中に沈んだポッドの中からようやく脱出したレオは、逃げ惑う原始的な人間たちの群れに遭遇します。なんと、驚くべきことに彼らを追っていたのは甲冑に身を包んだエイプ(猿)兵士たち。そこは人間と同じ言葉を話す知能を持った猿たちが人間を支配する猿の惑星だったのです。

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オリジナル版を踏襲しているのは舞台設定と、そこへ不時着した人間の宇宙飛行士が惑星からの逃亡を試みるという大筋のみ。

元々、猿と人間の力関係が逆転した惑星は、たとえSFの世界と分かっていてもナンセンス的な要素は否めなかったのですが、本作ではオリジナル版では描ききれなかった、“ナンセンス”な部分をあぶり出そうとしたようです。

しかし、人間と猿の究極の知恵比べを描いた、バートン的世界観が濃厚な『猿の惑星には多くの異論が唱えられ、ゴールデンラズベリー賞最低リメイク賞を受賞するなど、再びセンセーションを巻き起こしました。

とはいえ、時間軸を巧みに使って惑星誕生の謎にリアリティを持たせた脚本は、その謎が衝撃的なラストとして明かされたオリジナル版とはまったく違う意味でよくできており、単なるナンセンスに留まらないバートン流の“遊び心”に溢れた作品となりました。

注目のラストシーンには、バートンの独創性がいかんなく発揮されており、観る者の想像を上回る点では、“あっぱれ!”と言ってもいいのではないでしょうか?

ティム・ロスやへレナ・ボナム=カーター、マイケル・クラーク・ダンカンなど、猿役の俳優たちはエイプスクールで猿の動作をマスターし、3~4時間かかるメイクアップから唯一のぞく目だけで猿たちの感情の起伏を表現しています。そんな俳優たちの野心的な試みは注目に値します。

オリジナル版の主人公チャールトン・ヘストンが出演したのも話題になりましたが、残念ながらゴールデンラズベリー賞の最低助演男優賞を受賞する結果に。

全体的にかなり厳しい評価を受けた作品ですが、オリジナル版を上回る衝撃を創造しようとしたバートン監督らしい“攻め”の姿勢には、好感が持てます。結果的に生まれたのは“笑劇”でしたが……。


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PLANET OF THE APES/猿の惑星 (字幕版)