映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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シザーハンズ(1990)

手がハサミの人造人間〈シザーハンズ〉の哀しき運命
ティム・バートンの独創性豊かな傑作ファンタジー映画

程度の差こそあれ、人間だれの心の中にも善と悪、光と陰が存在しているのではないでしょうか。そんな人間の本質を教訓めいたおとぎ話にして映像世界で語るティム・バートン監督は、本作でアンダーグラウンド偏屈なオタク人間ではないことを証明しました。

彼の名を一躍世に知らしめた『バットマン』の翌年に発表された『シザーハンズ』は、手がハサミの人造人間エドワード・シザーハンズが主人公。私はこの設定を聞いて、ブラックコメディなのかと思っていたのですが、まったく違いました。

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【ストーリー】
山の上の屋敷に住む孤独な発明家が1人の人造人間エドワード(ジョニー・デップ)を生み出します。発明家はエドワードに人間同様の手を付ける前に急死してしまいました。そうして、両手が仮に付けられたハサミのまま、エドワードはひとりぼっちで屋敷に残されることに。
そんなエドワードの元に、ある日、化粧品のセールスをしている女性ペグが現れます。心優しいペグはエドワードを不憫に思い、自分の住む町へ連れ帰ります。
奇怪な姿のエドワードに町の人々は驚きますが、両手のハサミを器用に使って、植木やペットの毛、女性たちのヘアスタイルなどを美しく整えるうちに町の人気者になっていきます。
そして、エドワードはペグの娘キム(ウィノナ・ライナー)と恋に落ちます。

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ビジュアル的には『バットマン』のダーク・ファンタジーを継承せず、青い空とパステル調のカラフルな家が建ち並ぶアメリカ郊外の町を舞台に、繊細で心優しいエドワードと隣人愛に溢れる人々の交流を描いています。

ところが、うさん臭いほど健全でクリアな町で生まれた交流は、人間の心の底に潜む醜い欲望のためにエドワードの優しさを次第に奪っていくというどんでん返しが待っています。

私はピュアなエドワードに降りかかる悲劇の物語に心が痛み、涙が止まりませんでした。

人間に無から作られたという印象の白ぬりにぼさぼさ頭のシザーハンズを演じるのは、売り出し中の若手俳優だったジョニー・デップ美しくも陰のある風貌エドワードの哀しみをリアルに感じさせてくれます。

人間が住む原色の町が一転して白い雪一色に染まる幻想的なクライマックスなど、色の対照を巧みに使い、切なさと哀愁に満ちたファンタジーの名作として多くの人々に愛される作品です。


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