映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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トップガン マーヴェリック(2022)

トム・クルーズの挑戦に拍手喝さいを贈りたい!
トップガン』が観たかった人々を納得させる会心

若かりしトム・クルーズカリスマ的な魅力を放ち、大ヒットを記録したアクション映画『トップガン』(’86年)の36年ぶりの続編と聞き、「なぜ今さら? トム、大丈夫?」と思った方は私だけではないと思います。

ところが、ふたを開けてみれば、公開から3ヶ月時点での興行収入が日本では120億円を突破、本国アメリカでは7億ドル(約982億円)にのぼり、北米史上歴代第5位となる空前の大ヒットを記録しています。

私は、36年という長くて、重い月日を巧みに生かしたストーリー、そして、還暦直前に無謀な挑戦をやってのけたトム・クルーズの心意気に、胸が熱くなりました。

先の見えない不安が続く時代だからこそ必要なメッセージを携えて、愛や友情、夢や勇気を描いたトップガンの世界が鮮やかに蘇りました!

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【ストーリー】
ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐(トム・クルーズ)はトップガン史上最高の戦闘機パイロットとして、輝かしい戦歴を収めてきましたが、昇進を拒み続け、現場主義を貫いていました。
現在、スクラムジェットエンジン搭載の極超音速テスト機「ダークスター」のテストパイロットを務めるマーヴェリックは、優れた操縦技術で前人未踏の最高速度マッハ10を達成しますが、さらに記録を伸ばそうとし、ダークスターを空中分解させてしまいます。
この掟破りの行動により、マーヴェリックはノースアイランド海軍航空基地での任務を命じられます。その任務とは、トップガン卒業生から選りすぐられた若き戦闘パイロットたちに極秘ミッションの訓練を施すこと。そうして、30年ぶりに、自身が学んだ「トップガン」へ、今度は教官として戻ることになります。

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映画冒頭、朝焼けの飛行場で戦闘機を整備するシーンから、徐々に音楽が盛り上がり、1作目の挿入歌『デンジャー・ゾーン』のイントロに合わせて。戦闘機が大空へ飛び立ちます。1作目とまったく同じシークエンスでの幕開けに、“懐かしい”という思いがこみ上げます。

その後も、マーヴェリックが太陽を背にバイクで疾走するシーンや、トップガンへ送られる顛末、パイロットたちが集うバーで初対面する候補生とたち教官とのやり取りなど、1作目を彷彿させるシーンが数々あり、思わず『トップガン』が帰ってきた感慨に浸ってしまいます。

特に、日本で公開された35年前にリアルタイムで1作目を観た方にとっては、続編が観られること自体が奇跡のような出来事なので、特別な思いを抱くのではないでしょうか。そんな1作目のファンの〈期待=厳しい目〉に応えるために、本作はかつての『トップガン』のイメージを損なわないよう細心の注意を払い、丁寧に作られた印象があります。

30年ぶりにトップガンへ帰ってきたマーヴェリックが抱くのは、懐かしさではなく、相棒のグースを失った哀しみ。家庭を持たず、昇進も拒み、イラク戦争に2度従事するなど第一線で戦い続けてきたのは、マーヴェリックがグースの死の責任をずっと背負ってきたからだと分かります。

やんちゃで向こう見ずな青年だったマーヴェリックは心に痛みを抱えたキャラクターとして描かれており、ちょっぴり暗い印象も否めませんが、苦悩の人生を送ってきたマーヴェリックにとても共感できます。

といっても、バーの経営者として、かつての恋人ペニー(ジェニファー・コネリー)に再会するなど、恋のキャリアもしっかり築いていた様子 ( ´艸`)。知的で凛とした印象のジェニファー・コネリーが粋なヒロイン、ペニーを好演。トム・クルーズとの大人のラブシーンは控えめで、微笑ましいです。

さて、本作の見どころはグースの息子、ルースター(マイルズ・テラー)がトップガンの卒業生として、マーヴェリックと再会すること。グースの死をめぐり因縁のある2人はぶつかり合いながらも、米海軍の戦闘機パイロットとしての誇りと絆で結びつき、ならず者国家の悪企みを阻止するために、命がけの特殊ミッションへ飛び出していきます。

口ひげをたくわえたルースター役のマイルズ・テラーはどことなくグース役のアンソニーエドワードと風貌が似ており、アイスマンのような小憎らしい若者ハングマン(グレン・パウエル)もいます。そして、マーヴェリックのかつてのライバル、アイスマン役のヴァル・キルマーも闘病の影響が残る身体をおして出演しています。

ストーリー的には1作目の焼き直しなのですが、本作に限っては、それがいいのです。物語中盤までは、まるで「トップガン」同窓会のような懐古趣味的な展開ですが、特殊ミッションを描いた物語後半から、いよいよ21世紀の『トップガンが幕を開けます!

現在、米海軍で運用中のF/A-18E/Fスーパーホーネットなど、最新鋭の戦闘機を使った飛行シーンではIMAXカメラを機内に搭載し、実際に戦闘機に乗っているかのような臨場感あふれる映像が楽しめます。最新CGを駆使したダイナミックな映像に、二転三転するドラマチックな展開、大団円のラストまで、本当に素晴らしいです!

それにしても、本作では、改めてトム・クルーズの存在の大きさを感じました。36年にわたり、ハリウッド映画界のトップスターであり続けていますが、人気者であるがゆえに、プライベートでのスキャンダルも注目され続けました。宗教に心酔しすぎて、一時期は“アブナイ”人のように思われたことも。

‘90年代までは『レインマン』(’88年)、『マグノリア』(’99年)、『アイズ・ワイド・シャット』(’99年)など、ドラマ性の高い作品にも出演していましたが、だんだんとアクションやSFなどのエンタメ作品で超人的なキャラクターばかりを演じるようになり、マンネリ感も否めませんでした。

近年は男前すぎる代償なのか、年齢的な容姿の変化が取りざたされるようにもなりましたが、本作を観ると、まだまだ爽やかオーラは健在です。そこに酸いも甘いも噛分けた大人の余裕が加わったような気がしました。

本作のテーマの一つは限界への挑戦ではないでしょうか。36年後に同じ役が成長した姿を演じたトムの挑戦は胸に響くものがありました。

物騒で不安なことばかりの今の時代、世代を問わず、さまざまな壁にぶつかり、自分の限界を感じている方も多いと思います。でも、自分の意思があれば乗り越えられる! 大空へ果敢に飛び立つ元トップガンの姿に勇気と元気をもらいました。


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