映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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鬼畜(1978年)

名優・緒形拳が“鬼畜”の父親を力演
衝撃的な展開が心を揺さぶる昭和の名作

松本清張原作の短編小説を名匠・野村芳太郎監督が映画化。妾に産ませた3人の実子たちに手をかけていく父親の姿を描いた、昭和の名作サスペンス映画です。

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【ストーリー】
とある地方で、32才の竹中宗吉(緒形拳)は妻・お梅(岩下志麻)とともに小さな印刷所を営んでいました。2人に子どもはいませんでしたが、ある日、宗吉が妾にしていた小料理屋の女中・菊代(小川真由美)が3人の子どもたちを連れて、2人の前に現れます。稼業が傾いた宗吉は、菊代に送金できなくなってしまい、これに怒った菊代が真相をばらしに来たのです。
そして、翌朝、菊代は3人の子どもたちを残して、姿を消してしまいます。怒り心頭のお梅は、宗吉に子どもたちを何とかするよう迫ります。

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タイトルを聞いただけで、怖くて引いてしまうような映画を、私は小学校2年生の時、母に連れられ、映画館のロードショーで観ました。これまた昭和の名作『砂の器』との2本立て、という、今、考えるととても贅沢なラインアップなのですが、小学校2年生には早すぎます(;^_^A。

ここからは小学校2年生の記憶なのですが、まず始めに3人兄妹の末弟の赤ちゃんが怒ったお梅に、お醤油ご飯を大量に詰め込まれ、死んでしまいます。その後、真ん中の女の子が宗吉と東京タワーへ行き、置きざりにされてしまいます。最後、一番上のお兄ちゃんが宗吉に連れられ、崖へ行き、突き落とされてしまいます。

末弟をきつく叱るお梅、そして、頼りなげな宗吉がおろおろしつつも、お梅の言うがまま、じりじりと子どもたちを追い詰め、“鬼畜”になっていく過程の怖いこと! 末弟の死因だけ記憶と違うのですが(お醤油ご飯て?!)、小学校2年生の割には、映画のさまざまなシーンをかなりはっきり覚えており、「お母さんは私になぜこんな映画を観せるのか」と、しばらく疑心暗鬼になった記憶があります(;^_^A。

大人になってから、“あの子どもたちが酷い目にあう怖い映画は何だったのだろう”と思い、覚えているストーリーを頼りに調べてみると、 “鬼畜”夫婦を緒形拳岩下志麻が演じていたので驚きました。緒形拳は本作で第2回日本アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

テーマの重さや、名優たちの鬼気迫る演技、フィルム特有の陰影の深い映像、さらに裸電球やちゃぶ台など昭和の倹しさを感じさせる舞台設定など、気持ちが沈むような要素が多く、もう一度本作を観る勇気はまだありません。

ただ、怖いばかりではなく、ラストは意外な展開が待ち受けているようです。

親子関係が歪み、子どもたちの哀しいニュースが急激に増えた現代、本作は反面教師になるのではないでしょうか。本作の悲惨な光景を観て、自己中心的な大人たちが心を改めることを願っています。

なお、平成になり、『鬼畜』は2度テレビドラマ化され、それぞれ父親役をビートたけし玉木宏が演じているようです。


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