グッド・モーニング・プレジデント(2009)
悩める韓国大統領の愛すべき素顔
今観ると、ちょっぴり皮肉なハートフルドラマ
本作は今から13年前の2009年に製作された映画です。当時の日本では、2003年に日本で放送開始された『冬のソナタ』から始まった爆発的な韓流ドラマブームは落ち着いていましたが、2010年にKARAや少女時代が日本デビューして、K-POPブームが始まります。
そんなまだまだ韓流ブームが盛り上がっていた頃に登場した本作品。昨今の韓国内の政治状況や、日韓関係をふまえると、当時は良い時代だったんだな、と思えます。
「大統領がこんなにいい人だったら……」。夢と愛に溢れた3人の大統領の物語です。
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【ストーリー】
1人目の大統領キム・ジュンホ(イ・スンジェ)はイベントでロトくじを購入し、当選した際には全額寄付すると宣言します。ところが、奇跡的にくじが当たり、大金を手にすることになった大統領は思い悩みます。当選を公表するべきか、それとも黙って当選金を自分の懐に入れてしまうか……。
2人目の大統領チャ・ジウク(チャン・ドンゴン)は若きカリスマ大統領。男手一つで育てる5歳の息子に誇れる人間になるよう懸命に政務に励んでいます。そんなジウクが市内視察のイベント会場で若い男に襲われてしまいます。
男は病気の父親のためにジウクに臓器提供を求めます。大統領として、国民の願いを聞き入れるべきなのか、ジウクは思い悩みます。
3人目の大統領ハン・ギョンジャ(コ・ドゥシム)は念願かなって韓国初の女性大統領に就任しました。
しかし、政務を最優先にするハンは、家族思いの夫チャンミョン(イム・ハンリョン)との溝を深めていきます。そんななか、チャンミョンの不注意が原因でハンの支持率が低下。責任を感じたチャンミョンはハンに離婚を切り出します。夫婦の危機に直面したハンは思い悩みます。
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大統領であるために生まれた、私的な問題に悩む大統領たちの素顔が描かれます。
大統領の人間としての良心を問うような皮肉めいたテーマが根底に流れますが、3人ともこの問いかけを鮮やかにクリアしていきます。
映画の語り口は実に穏やかで、微笑ましいユーモアが満載され、心温まるヒューマンドラマに仕上がっています。
“愛すべき大統領”という夢のような存在が違和感なく受け入れられるのは、魅力的な韓国人俳優たちの妙演の賜物でしょう。韓国の国民的俳優イ・スンジェがロトくじ一人占めの誘惑にかられるキム大統領をコミカルに演じています。そして、4年ぶりの映画主演となったチャン・ドンゴンは爽やかで人間味溢れる青年大統領がよく似合います。3人の大統領を始め、彼らの家族や側近たちも味があります。
監督・脚本は大ヒット韓国映画『トンマッコルへようこそ』(’06年)のチャン・ジン。『トンマッコル~』で北朝鮮と韓国兵士の交流を実現させた監督は政治に希望を持っている人なのでしょう。
彼の熱意がこの映画を通し、政治不信の日本の人々、また問題ある政治家たちにも広まることを切に願います。