メン・イン・ブラック２（2002）
アメリカンスピリットが生んだエイリアン映画
ナンセンスの度がぐんと増したシリーズ第2弾
月を制覇し、宇宙の謎を解き明かし、そして、今度は、地球外知的生命体の証を探し求めて火星探査に夢中――。
いつの時代になってもアメリカの未知なるものへの探求心と開拓精神は世界随一でしょう。ミステリー、アクション、コメディなど、多彩なジャンルにわたり作り続けられてきたエイリアン映画はそんなアメリカンスピリットの象徴ではないでしょうか？
現実世界でも映画の世界でも、ファンタジーの追究や創造のために、多額の費用を惜しみなくつぎ込む様子は革新とナンセンスの間で微妙なバランスを保ちます。
現実世界でその浪費が酬われるスピードは遅々としたものですが、映画の世界では独創性とリアリティに溢れるエイリアンたちが続々と登場し、未知なるものの正体を知る驚きと喜びを味わうことができます。
アメコミが原作の『メン・イン・ブラック』は人間に化けることを条件にエイリアンの移住を許可した地球が舞台。この異常事態にエイリアンの監視役兼トラブルバスターとして組織された最高機密機関MIBのエージェントたちの活躍を描いたSFアクションコメディです。
主演のウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズが、軟派と堅物という対照的なキャラクターのエージェントコンビを組んで披露した丁々発止の掛け合いが小気味よく、ギャグやブラックユーモアのセンスも抜群。ひと皮向けば奇妙な姿態をさらけ出すエイリアンたちのユニーク度も満点で、1997年度の全米興行収入ナンバー１を記録しました。
大きな期待の中で迎えられた5年ぶりの続編『MIB2』は、「バカだなー」と笑ってもらうことが本望なのでしょう。前作の勝因となった主演コンビもエイリアンの造形も、ナンセンスの度がぐんと増しました。
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【ストーリー】
25年前にK（トミー・リー・ジョーンズ）が処理したエイリアンの秘宝「ザルタの光」を狙って、邪悪なエイリアンのサーリーナが地球に不法入国し、Kを捜してMIBを占拠します。
ところが、すでに引退したKはMIBでの記憶を消去され田舎の郵便局長として平和な暮らしを送っていました。今やベテランエージェントとなった元相棒J（ウィル・スミス）はKの記憶を取り戻そうと奔走します。
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性格のずれが愉快なウィルとトミーは、1作目とは立場を逆転させた設定がばっちりはまり、軽快なテンポでストーリーを運んでゆきます。
しかし、前作以上の面白さが期待できるのは、アメリカンスピリットが生み出したエイリアンの数々です。さながら見本市のように多種多様なエイリアンたちが次々と現われます。その驚き、喜び、楽しさといったら、このうえありません！
パグ犬型エイリアンのフランクや、虫型エイリアンのワームなど、1作目で人気を得たクリーチャー系エイリアンは単なるコメディリリーフにとどまらず、ウィル・スミスとの絡みがぐんと増え、陽気なラッパーのウィルをへこますほどのファンキーなノリで重要なコメディパートを担っています。
さらに、『MIB』ならではのユニークさで描かれるのは三つ目、鱗顔、鳥男に、2つの顔を持つ男、マイケル・ジャクソン（? !）などなど……、人間の俳優に施した超リアルな特殊メイクとCGの融合で生まれた人間系エイリアンたちです。
ややもすればグロテスクで悪趣味な風貌にもかかわらず、アナログ的な温かみと可笑しさが感じられるエイリアンたち。これを大の大人が考え、大の大人が演じている――、大の大人を楽しませるために――。ナンセンスをものともしない、このアメリカンスピリットこそ、『MIB』シリーズ最大の魅力といえるでしょう。
でも、ただひとつ、この魅力による弊害があります。それは「ザルダの光」なる謎の宝を探し求めるストーリー上のミッションなんて、どうでもよくなってしまうってこと。KをMIBに復活させることこそ、『２』映画化の重要なミッションであり、Kの記憶をよみがえらせる過程でエイリアンたちも次々に現われます。だから、Kの記憶が再生し、ザルダの光の謎が解けた時点で、まるで作品の使命は終わったとばかりにユニークさはトーンダウンしてしまいます。
エイリアンの造詣こそインパクトがあるものの、ギャグの数々は子どもじみたオフザケのようで、爆笑というよりは失笑もの。終盤は尻つぼみの感がぬぐえません。
それもまた、結果はともあれ開拓精神やチャレンジ精神こそ意義がある、と考えるアメリカンスピリットのなせるわざ、と言えるかもしれません。
良くも悪くもハリウッドらしいエイリアン映画です。
