河童のクゥと夏休み（2007）
現代の河童騒動には笑いと感動、
大切なメッセージがぎっしり
河童の子どもが300年の時を超えて現代に蘇ったことから起こる大騒動を描くファンタジー。
劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズで高い評価を受けた原恵一監督による傑作アニメーションです。
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【ストーリー】
東久留米市に住む小学４年生の少年・康一が河原で拾った大きな石から、なんと干からびた仮死状態の河童の子どもが現れます。「クゥ」と名づけられた河童は元気になるまで康一の家で暮らすことになります。
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クゥとすっかり仲良しになった康一や、初めて見る河童に興味津々のお父さん、「やれやれ」と思いながらも親身に世話するお母さん、家族の注目を集めるクゥに対抗意識を燃やす幼稚園児の妹、様変わりした環境に戸惑うクゥの心の支えとなるペットの犬など、それぞれの接し方で独りぼっちのクゥを受け入れる家族と、そんな家族の思いに誠実に応えるクゥとの日常を描く物語前半は、ずっと微笑んでいられる楽しいエピソードが満載です。
特に夏休みに康一が仲間の存在を信じるクゥを連れて、河童伝説で有名な秋田県遠野へ向かうエピソードが印象深いです。自然を守ることの大切さをしみじみと説き、雄大な自然を捉えた美しい映像が心に染みます。
クゥの存在を知った康一の友達や、マスコミ、世間の反応を描く物語後半では、人間の身勝手さをまざまざと見せ付けます。マスコミに追いかけられる家族のために、クゥが恐怖に耐えてテレビ出演するシーンでは、自分本位な大人たちに対する怒りと涙がこみ上げてきます。
自然破壊への警鐘を鳴らし、異物に対して好奇の目を向けがちな人間を戒める――。いじめ問題や動物虐待にも言及するなど、かわいい河童の冒険譚に留めることなく、現代社会の問題点をごく自然に織り交ぜた原監督の脚本が素晴らしいです。
すべての問題は、「思いやりの心」を持てば解決されるはず。自然にも動物にも人間にも――。純真無垢なクゥの存在を通して伝える普遍的なメッセージは、子どもだけでなく、大人の胸にも迫るでしょう。
