スーパーマン リターンズ(2006)
時代の変化もなんのその 逆境を跳ね返し、奇跡を起こせ!
それが新時代に復活したスーパーマンの使命
クリストファー・リーヴ主演の映画シリーズ最終作から19年。ビジネススーツの下にヒーロースーツを着込みながらも、その身分は決して明かさない。心優しき無敵のヒーロー、スーパーマンがスクリーンに帰ってきました。
本作は2006年に製作された『スーパーマン』の待望の新作でした。“スーパーマン”という超ド直球なネーミングはヒーローの中のヒーロー、“ザ”・ヒーローと言っても過言ではないでしょう。そのため、新作への注目と期待は世界的に相当に高かったと記憶しています。
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【ストーリー】
自分の過去を求めて宇宙を放浪していたスーパーマン(ブランドン・ラウス)は、故郷のクリプトン星の壊滅を知り、第2の故郷である地球で生き抜く決意を固めて帰還します。
しかし、かつて命を助けた最愛の女性ロイス(ケイト・ボスワース)には恋人と子どもがおり、メトロポリスは犯罪が急増するなど、彼を取り巻く地球の状況は激変していました。
さらに痛手となったのは、スーパーマンがもはや過去の遺物と成り果てたことでした。
そんな中、かつてのスパイダーマンの宿敵レックス・ルーサー(ケヴィン・スペイシー)が大犯罪を計画します。新大陸を創るため、アメリカ大陸を沈めようとしたのです。
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疎外感と喪失感に打ちのめされ、新聞記者クラーク・ケントとしても、スーパーマンとしてもモチベーションを失いながら、鋼鉄の男はどう生きてゆくのか。本作では、アイデンティティーを探すヒーローの苦悩と葛藤が物語の軸となります。
注目の監督は、『ユージュアル・サスペクツ』『X-MEN』シリーズのブライアン・シンガー。どんでん返しの結末が見事な『ユージュアル・サスペクツ』、アメコミなのにシリアスタッチな『X-MEN』に見られるように、真面目に考えるとバカバカしくなるような事柄をじっくりと練り上げ、劇的な展開へと持ち込むのがシンガー監督の得意技です。
旧シリーズでは軽く触れる程度だったスーパーマンの重要なテーマである、万能の力の限界について深く掘り下げると同時に、CGを駆使した壮大なアクションシーンをふんだんに盛り込み、起伏に富んだ構成で、スーパーマンの復活劇を鮮やかに演出しました。
本作では、ロイスとのほろ苦い別れを経験し、狂気の科学者レックス・ルーサーに力を奪われたことから死の危機に瀕したスーパーマンが復活を果たすまでの軌跡が描かれています。
何でもできちゃう痛快無比なリーヴ版とは違い、スクリーンにいるのは、ときにこてんぱんに痛めつけられるスーパーマン。でも、逆境を跳ね返して奇跡を起こすスーパーヒーローは、この夢の持てない沈んだ現代にふさわしいのかもしれません。
旧作と比べることなく、時代の変化を受け止めて観ましょう。そして、成長するスーパーマンを応援しましょう! と思っていたのですが、興行的には成功したものの、配給会社の見込んだ収益には届かなかったため、本作の前に決定していた続編は中止になったそうです。
また、新スーパーマンに抜擢されたブランドン・ラウスは本作以降、大作には出演せず、映画やテレビの端役として地味に活動しているようです。
新『スーパーマン』は注目され過ぎたための、ちょっぴり切ない結末を迎えました。
ちなみに『スーパーマン』の映画版は2013年、『マン・オブ・スティール』とタイトルをガラリと変えて復活。イギリス人俳優ヘンリー・カヴィル主演で全3作製作されています。