映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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アンタッチャブル(1987)

ハラハラドキドキしっぱなし!
とにかくカッコいい! 傑作ギャング映画

1920~30年代初期のシカゴを舞台に、強大な勢力を誇ったマフィアのボス、アル・カポネと、彼を逮捕しようとする捜査官たちとの壮絶な攻防を、ブライアン・デ・パルマ監督が1987年に映画化しました。

デ・パルマ監督は、スティーブン・キング原作の超常ホラー『キャリー』(’76年)、ヒッチコック監督の『サイコ』にオマージュを捧げたエロティックサスペンス『殺しのドレス』(‘80年)、アル・パチーノ主演のギャングアクション『スカーフェイス』(‘83年)など、カルト的な人気を博した作品で注目を集めていました。

本作は、長回しやスローモーション、分割画面や覗き風の視点など、独特の映像手法を多用し、“映像の魔術師”とも称されたデ・パルマ監督が真骨頂を発揮、けれん味あふれるシーンの数々にハラハラドキドキしっぱなしの傑作ギャング映画です。

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【ストーリー】
1920~30年代初期、禁酒法が施行されたアメリカでは、ギャングたちが酒の密売やカナダから酒を密輸し、莫大な利益を得ていました。アメリ財務省のエリオット・ネス(ケビン・コスナー)は連邦政府からギャング摘発チームの捜査主任に任命され、シカゴへ向かいます。赴任早々、酒密造摘発で手柄を立てようとしたものの、ギャングに買収された警察官が情報を漏らしたために失敗してしまいます。
その帰り道、失意の中にいたネスは初老の警官ジム・マローン(ショーン・コネリー)に出会います。その後、シカゴを牛耳るアル・カポネの逮捕に意欲を燃やすネスは、マローンや射撃の腕を見込んだ新米警官のジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)、カポネを脱税で逮捕することを提案した財務省の簿記係オスカー・ウィレス(チャールズ・マーティン・スミス)ら、信頼できる仲間を集め、独自の捜査に乗り出します。

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一筋縄ではいかない男たちが集まった作品は本当に見どころが満載です。

まずは豪華な俳優陣の競演。本作の主演に大抜擢されたケビン・コスナーは正義漢のネスを好演、一躍トップスターの仲間入りを果たしました。ジョルジオ・アルマーニのスーツをビシッと着こなしたケビンはスタイリッシュで、改めて見ると本当に“イイ男”です。

いぶし銀の名優ショーン・コネリーと変幻自在の怪優ロバート・デ・ニーロベテラン対決もワクワクします。そして、ニヒルなジョージをクールに演じたアンディ・ガルシアも本作で一躍脚光を浴びました。

カポネの買収工作に応じず、マフィアを追い詰めるネスたちのチームは、手出しのできない“アンタッチャブル”としてマフィアの報復を受けることに。両者による激しい銃撃戦が何度も繰り広げられますが、“嵐の前の静けさ”を効果的に取り入れたアクションシーンが実にハラハラドキドキして、痺れます。

有名なのはシカゴ・ユニオン駅で、ネスとストーンが逃亡するマフィアを待ち伏せするシーン。駅中央の大階段でネスがマフィアの到着を待っていると、女性が乳母車を押し上げながら階段を登っていきます。大変そうな女性を見かねてネスが乳母車を引き上げていると、そこへマフィアが到着。マフィアに気を取られたネスがなんと、乳母車を離してしまうのです。そこから始まるスローモーションによる銃撃戦は必見です。

乳母車が階段を下るなか、ネスやマフィアたちが容赦ない銃撃戦を繰り広げます。乳母車の中には、かわいい赤ちゃんがいます。正直言って、真夜中の12時に赤ちゃん連れの女性がいることに素朴な疑問が湧くのですが、緊迫感とカッコよさを追求したデ・パルマ監督の術中にまんまとはまり、息を詰めて見入ってしまいます。

また、マローンの自宅で起こるマフィアとマローンとの攻防はマフィアの視点で描かれ、ひたひたと忍び寄るマフィアの脅威が伝わってきます。ドラマチックな展開に驚かされるショーン・コネリーのアクションシーンは見せ場の一つです。

ロバート・デ・ニーロアル・カポネは何を仕出かすか分からない狂気がみなぎっています。そして、そんな恐るべきロバート的カポネに対峙するネオをスマートに演じていたケビン・コスナーも最後には感情を爆発させます。

静から動への転換で観る者を惹きつけるデ・パルマ監督の演出に、俳優たちも渾身の演技で応えています。

そして、映画のオープニングを飾るテーマ曲のカッコよさも語るべきでしょう。不穏な雰囲気を高める、重低音の不気味なメロディは、『ニュー・シネマ・パラダイス』('89年)も手がけたイタリアの作曲家エンニオ・モリコーネによるものです。


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