映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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アメリカン・ビューティー(1999)

イギリス人監督サム・メンデスが捉えた
アメリカの中流家庭の崩壊劇

第72回米アカデミー賞(2000年度)で作品賞を始めとする主要5部門を制した辛辣なファミリードラマです。

舞台監督としてキャリアを築いたイギリス人のサム・メンデスが、長編フィルム初監督作でアメリカの典型的な中流家庭を捉えました。

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【ストーリー】
広告代理店に勤め、シカゴ郊外に住む42歳のレスター・バーナム(ケビン・スぺイシー)は一見、幸せな家庭を築いているように見えました。
しかし、不動産業を営む妻キャロライン(アネット・ベニンぐ)は見栄っ張りで自分が成功することで頭がいっぱい。娘のジェーン(ソーㇻ・バーチ)は典型的なティーンエイジャーでレスターのことを嫌っています。レスター自身も中年の危機を感じていました。
ところが、ジェーンのチアリーディングを見に行ったレスターは娘の親友アンジェラ(ミーナ・スヴァ―リ)に恋をしてしまいます。
そうして、レスターが必死に働き、成功の末につかんだ幸せな家庭の危険な真実が浮き彫りになっていきます。

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倦怠期に差しかかった共働きの夫婦と、反抗期になり、とくに父親に対する感情をうまく制御できない高校生のひとり娘。家族を形成する過程で、多くの人が陥るであろう、ありふれた悩みを抱えたこの家族が、父親のリストラをきっかけに崩壊へ向かいます。

しかし、本当のきっかけは、リストラによって父親や大人が持つべきプライドを捨てた中年男の精神の崩壊にありました。ラストは衝撃的ですが、崩壊にいたる過程は緩やかで滑稽にさえ見えます。

アメリカの美”と形容された “幸せな家庭”は幻だったのでしょうか?
レスターは一体何のために頑張ってきたのでしょうか?

CGで生み出された舞い散るバラの花びら、冒頭とラストに登場し作品のテーマを物語る実写で撮影された風に漂うビニール袋など、人間の儚さを象徴するビジュアルも秀逸。

娘の友達の高校生に欲情し、自我の存在を確認する父親のレスターにケビン・スペイシーが扮し、ユーモラスかつシニカルな演技を披露。『ユージュアル・サスペクツ』の助演男優賞に続いて、主演でもオスカーを射止めました。


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アメリカン・ビューティー (字幕版)