シュレック
醜い怪物シュレックが大人のために語る現代のおとぎ話
思い切り笑って、スカッと爽快! 傑作フルCGアニメ
誰もが子供の頃に読み聞かせられたおとぎ話には人生の教訓がいっぱい。数々のファンタジックなキャラクターが教えてくれた〈善いことと悪いこと〉、〈すべきこととしてはいけないこと〉、それらはすべて簡単なことなのに大人になって忘れている人はいないですか?
2001年に公開されたフルCGアニメ『シュレック』はそんなおとぎ話の伝統を復活させ、偏見と差別がまん延している現代社会に喝を入れます!
とはいえ主人公のシュレックは臭くて醜い、嫌われ者の怪物。彼にとって非現実なおとぎ話はトイレットペーパー代わりにしかならない無用の長物なので、かなりシュールなおとぎ話になりました!
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【ストーリー】
シュレックは人の骨を粉にしてパンにするという噂がまことしやかに囁かれる緑色の大男。すきあらば、怪物のシュレックを退治しようと試みるうるさい人間たちから離れ、森の沼地のほとりでたったひとりの静かな生活を楽しんでいました。
その一方で、森の中ではおとぎ話のキャラクターが悲惨な目にあっていました。賞金目当てにおとぎ話のキャラクターを売りに来る人間が列をなし、老婆に連れられたドンキーも〈しゃべるロバ〉として売られるところでしたが、偶然出会ったシュレックのおかげで難を逃れます。
命を助けられたドンキーはいつもの陽気なおしゃべりを取り戻し、すっかりシュレックとも友達になった気分でしたが、シュレックにとってははた迷惑なだけ。一夜の宿を頼むドンキーに仕方なく応じるものの、これがとんでもないことに。その夜、沼地は無数の侵入者たちで溢れかえり、シュレックの静かな生活が奪われてしまいます。
侵入者たちの正体はパーフェクトワールドを作ろうと躍起になっているフォークアード卿によって追放されたおとぎ話のキャラクターたち。シュレックは彼らを追い出すためにフォークアード卿に追放をとくよう掛け合いますが、〈ドラゴンの城に囚われているフィオナ姫を連れ戻すこと〉という条件を言い渡されてしまいます。
シュレックは意地悪でずる賢いフォークアード卿に利用されているとも知らずに、ただただ孤独な生活を取り戻すためドラゴン退治の危険な旅へ出かけるのです。
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ひょんなことからドラゴンの城に囚われた美しいお姫さまを救い出すヒーローを演じるはめになった怪物の冒険を描いたコメディ『シュレック』は、『アンツ』('98年)でフルCG長編アニメーションの製作に乗り出したPDI/ドリームワークスの第2弾。
前作同様、ちょっとせつない人間社会の縮図をパロディ化して描くことにフルCGアニメの活路を見出したのは大成功。CGの役目がリアリティの構築なら物語にも現代社会に通じるメッセージを込めています。
そのため、おとぎ話やディズニー映画のパロディが次々に生まれたというのが皮肉ですが、厳しい現実や逆境を鮮やかに乗り越えるCGキャラクターたちの熱演は深い感動を呼び、スマッシュヒットを記録。2001年に新設されたアカデミー賞長編アニメ映画賞の最初の受賞作となりました。
顔の表情を豊かにしたフェイシャルアニメーションシステム、ドラゴンの城のアクションシーンを高めたボリュームレンダリングテクニック、心安らぐ自然界の背景を作り上げたシェイダーシステムなど、ヒットの勝因には楽しいストーリーを演じるキャラクターたちの魅力を引き出したCGアニメーション技術の進歩も見逃せません。それはシュレックとフィオナ姫のロマンスシーンで最高潮に達し、表面を内側から変形させる新プログラム、シェイパーシステムにより、ふたりの屈折した心情を顔の表情だけで表現し、人間さながらの名演を引き出しています。
さて、物語はパロディの連続で思いきり笑わせた後に、いきなり現代社会が抱える問題を突きつけます。シュレックがなぜ孤独を好むのか? フィオナ姫がなぜ幽閉されていたのか? 目に見えるものしか信じない、いや信じられなくなったのは情報化社会の弊害であり、間違った情報に流されないために必要な処世術かもしれませんが、それではあまりに悲しすぎるとシュレックは教えてくれます。
21世紀のおとぎ話はちょっとほろ苦いですが、結末はやっぱりハッピーエンド。「幸せはすべての人に降ってくる」と謳い上げる、感動的なクライマックスももちろん『シュレック』流。そのユニークさは期待を裏切らない素晴らしい仕上がりです。
シュレックを『オースティン・パワーズ』のマイク・マイヤーズ、ヒロインのフィオナ姫をキャメロン・ディアス、シュレックの相棒ロバのドンキーをエディ・マーフィ、そして悪役フォークアード卿の声をジョン・リスゴーが演じており、型破りなキャラクターに息を吹き込んでいます。