映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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A.I.(2001)

2人の巨匠のコラボレーションが注目された壮大なSFファンタジー
人間と感情のあるロボットたちが共存する未来社会の光景とは?

「人間は愛がなくては生きられない生物だ。それが人工知能A.I.)によって生まれたバーチャルな愛だとしても、愛し愛される対象を求める――」

原作はSF作家ブライアン・オールディスの短編『スーパートイズ』。子どものいない人間の家庭で、子どもの代用品として育てられる少年型アンドロイドが母親から真の愛情を手に入れるまでを描いた物語を、スタンリー・キューブリックが次回作として膨大なストーリーボードで肉付けし、スティーブン・スプルバーグがその遺志を受け継ぎ映像化しました。

映画史に残る2人の巨匠のコラボレーションに並々ならぬ興味が集まった、3部構成の壮大なSFファンタジーです。

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【ストーリー】
外見は完璧な8歳の少年のデイビッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は愛するという感情を入力できる次世代型ロボットとして開発され、その高度な能力を試すために不治の病で冷凍保存された息子を持つ若い夫婦の子どもとして迎えられます。
母親のモニカ(フランセス・オコナー)はデイビッドを実子同様にかわいがりますが、現代医学で息子のマーティンが治癒し、再びモニカの元へ帰ってきたことからデイビッドの生活は一変します。
ロボットのデイビッドを心から愛せないと悟ったモニカは彼をロボットが徘徊する森の奥に置き去りにしてしまいます。
モニカに捨てられたデイビットはロボットの苛酷な現実を見せつけられながらも、ただひとつ母に愛されたいという願いを貫き、人間になるための旅をします。

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本作が公開されたのは21世紀が幕を開けた2001年、今から20年以上前のことです。ノストラダムスが予言した〈人類滅亡の危機〉も無事乗り越え(!)、100年に一度の新世紀に入る瞬間を目の当たりにして、感慨を抱いた人も多いのではないでしょうか?

また、人工知能の反乱を描いた『2001年宇宙の旅』の時代がついに到来した年でもありました。実際の世界は、映画ほどには進歩していませんでしたが、1999年にはペットロボット〈AIBO(アイボ)〉が発売され、人気を呼ぶなど、〈A.I.=人工知能〉を持つロボットと共存する新しい社会へと着実にむかっていく。そんな明るい希望に満ちていた時代だったような気がします。

そんな旬なタイミングでの、名匠スピルバーグによる映画化に期待せずにはいられませんでしたが、ふたを開けてみると、テーマ自体はロボットもののSFとしてはありがちな主従関係が明確な人間とロボットの共存する社会の理想と現実について説いた作品になりました。

そして、そんな未来社会を描くにあたって、常に浮き彫りにされるのは人間の傲慢さや非情さです。デイビッドのほか、旅の道連れとなるジゴロ・ロボットのジョー(ジュード・ロウ)と時代遅れのスーパートイ、テディ(声・ジャック・エンジェル)ら、さまざまなロボットたちにも過酷な運命が待ち受けており、正直いって、辛い物語です。

本作は、人間の愛の深さや愚かさについて再考させ、人工知能を作り出すことの責任について問う社会派ドラマになるはずだったのではと思います。

しかし、そのシンプルなメッセージは万人に対してストレートに伝わるものではなかったようです。

スピルバーグキューブリックの構想にほぼ忠実に脚本化したそうですが、ピノキオの童話を持ち出し、デイビッドがブルー・フェアリー(声・メリル・ストリープ)を捜しはじめたところからメルヘンタッチなスピルバーグが濃くなり、批評的には賛否両論に別れる結果となりました。


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