女の子ものがたり(2009)
“夢中”に生きることを思い出させてくれる
切なくも、まぶしい友だちとの思い出
郷愁と毒気が入り交じった独特のタッチで、人生の機微を描く人気漫画家・西原理恵子の自叙伝的コミックの映画化です。
田舎に暮らす貧乏な3人の女の子が悲惨な境遇を笑い飛ばしながら、未来を信じて明るく生きる姿を優しく見つめた作品は、ベストセラーとなりました。
*******
【ストーリー】
36歳の漫画家の高原菜都美(深津絵里)はスランプ気味で、昼間からビールを飲み、たらいで入浴するなど、体たらくな生活を送っていました。すると、新米編集者の財前(福士誠治)からキツイ一言を言われてしまいます。「先生、友だちいないでしょう……?」。
そんな菜都美が思い出したのは、子どもの頃、海と山の見える小さな田舎町でいっしょに過ごした、親友のきいちゃんとみいちゃんのことでした。
うまく行かない現実を送る菜津美は、苦しくとも夢中で生きていた少女時代に思いを馳せます。
*******
映画版では、漫画家になった女の子、菜津美の現在と、彼女が2人の親友たちと過ごした少女時代の出来事を交錯させながら、物語が展開します。
大人になった菜津美は映画オリジナルのキャラクターなのですが、大人になった西原さんの分身的存在と言います。大人の菜津美を演じたのは、深津絵里。現在、NHKの朝ドラ『カムカム・エブリバディ』の3人のヒロインの1人、るい役の巧みな演技で、久々に注目を集めていますが、本作での、西原氏をベースにした、ユーモラスで味のある演技も秀逸です。
映画の中心になるのは、女の子たちの思春期のエピソード。菜津美と親友のきみこ、みさの3人はさまざまな人々と出会い、経験を重ねながら大人へと成長していきます。
菜津美の小学生時代は、実写ドラマ『ちびまる子ちゃん』のまるこ役が話題を呼んだ森迫永衣、高校時代はハリウッド映画『SAYURI』に出演した大後美寿々が演じています。そして、高校時代のきみこ役を、ブレイク前の波瑠が演じていて驚かされます。
3人の若手女優たちが少女時代をはつらつと演じていて、素晴らしいです! 「人生とは思い通りにいかないもの」と分かっていても、生まれた境遇がそれぞれの生き方に影響し、明暗分かれる女の子たちの姿に胸が詰まります。
幼いころに過ごした友だちとの思い出にふけるうちに、菜都美の心が徐々に変化し始めます。
笑いと涙の人間賛歌――。西原理恵子流の味わい深い世界観が見事に再現されています。