映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

人生に迷えるアラフィフ女性が、映画を通して人生について考える。ネタバレなしの映画レビューサイト。

キッド(2000)

子ども時代へとファンタジックな時間旅行へ誘う
ブルース・ウイリス主演のハートフルコメディ

子どもなら誰もが大人になった自分の姿を想像するでしょう。「どんなに素敵な大人になっているのだろう」と。

ところが、実際は、大人になると、そんな夢を見たことすら忘れてしまうのではないでしょうか。そんな大人たちをファンタジックな時間旅行へ誘ってくれる作品です。

監督は『クール・ランニング』『あなたが寝てる間に…』『フェノミナン』のジョン・タートルトーブ

『マーキュリー・ライジング』(‘98年)や『シックス・センス』(‘99年)など、悩める子どもを救う役柄が続いていた主演のブルース・ウイリスがまたしても悩める子供を相手に奮闘します。

でも、今回ばかりはどんなに頑張っても子どもを救えません。なぜなら悩める子供は8歳の頃の自分であり、悩みの根源が子どものころの夢を叶えていない自分自身なのだから……。

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【ストーリー】
40歳まじかの敏腕イメージ・コンサルタント、ラス・デュリッツ(ブルース・ウイリス)は他人を寄せ付けず、仕事のためなら多少の悪知恵も働かせるほど。そんな自信たっぷりの言動ははっきり言って嫌なヤツ。
唯一の肉親である父親とも子ども時代のある出来事をきっかけに疎遠になり、同僚のエイミー(エミリー・モーティーマー)とも友達以上恋人未満の間柄で、ひとり気ままな独身生活を送っています。
そんなある日、ラスの前に突然8歳の頃の自分が現われます。2人ともその理由は分かりませんが、はっきりしているのはお互いの自分の姿に幻滅しているということ。大人のラスはいじめられっ子で、不器用な子ども時代を封印し、子どものラスティ・デュリッツ(スペンサー・ブレスリン)は「パイロットじゃなくて、犬も家族もいない」、全然夢を叶えていない未来の自分の姿にがっかりします。
しかし、「この運命のいたずらには何か理由があるはず」と同じ人間なのにまったく他人のような大人と子どもが同じ記憶をたぐり寄せ、心の旅に出ます。

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優秀だが人間味に欠けるビジネスマンと、平凡だが心温まる夢を思い描く少年が人生の意味について問うハートフルコメディは、対照的な役を演じる2人の俳優によって、より説得力をもちました。

少年がそのまま大人になったような茶目っ気を持つブルース・ウイリスは、勇敢なアクションヒーローもぴったりですが、8歳の子ども相手に本気でケンカしている姿もはまります。

そんなウイリスに負けず劣らず魅力を振りまいているのが、ブルースの子ども時代を演じるスペンサー・ブレスリン君。3歳からテレビコマーシャルやテレビドラマで活躍していましたが、本作では2000人以上の子役たちの中から選ばれ、本作で映画デビューを飾りました。

ウイリスとのケンカにも近いやり取りも、夢をまっすぐ見つめる純粋な子ども心も、すべてを自然体で表現するスペンサー君はちょっぴりたどたどしいところもあるけれど、それがかえって子ども時代へのノスタルジーを喚起させます。

ラストに用意されたあっと驚く仕掛けも心憎く、映画を見終わった後にはタートルトーブ監督の魔法にかけられたラスのように、生まれ変わった自分を発見していることでしょう。


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