映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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あるスキャンダルの覚え書き(2006)

孤独な初老の女教師が求めた友情の果て
「ただ愛されたい」という純な思いが招いた壮絶なバトル

秘密で結ばれた女同士の歪んだ友情が恐ろしい事態を招く異色のサスペンススリラーです。

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【ストーリー】
ロンドン郊外の中学校に勤めるベテラン教師バーバラ(ジュディ・デンチ)は、厳格で何事にも批判的な性格から同僚や肉親にさえも敬遠される初老の女性。本音を言えるのは、飼い猫と日記の中だけという、孤独で侘しい人生を送るバーバラの前に新任教師シーバ(ケイト・ブランシェット)が現れます。バーバラは、美しく、危うい魅力を放つシーバに特別な感情を覚え、崇高で永遠の友情を求めて近づいていきます。

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バーバラは無関心を装いながらもシーバをしっかり観察し、夜毎シーバの記録を日記に書きつづります。シーバとのささいな接点を絆と思い込んで喜ぶバーバラの姿は、不気味ながらも滑稽です。

やがてバーバラが男子生徒の喧嘩を仲裁してシーバを助けたことから2人は親密になります。バーバラは、家族に恵まれながらも人生に喪失感を抱くシーバに、自分と同じ孤独を感じ取り、友情を再確認します。
しかし、シーバが孤独を埋めるために選んだのは、バーバラではなく、教え子の少年でした。

シーバは15歳の教え子と不倫し、バーバラはそのスキャンダルを利用して、シーバを支配しようとします。シーバが禁断の愛に欲情し、バーバラが異常な行為に走るのは、ただ「愛されたい」という純な思いから。深い孤独からくる愛の欠乏が、2人の人生を狂わせていきます。

バーバラとシーバの関係はかなりショッキングな展開を見せますが、「愛されたい」という強い思いが、嫉妬や独占欲へと変わるバーバラの気持ちも理解できます。

人生で一番恐ろしいのは、孤独になることに違いありません。孤独の淵から這い上がろうともがくバーバラの狂気は決して他人事と笑っては済ませられないはず。人間の本質を鋭く突いた、リアルで怖い物語です。

コミュニケーション不全の現代人を皮肉な視点で見つめるのは、イギリスの名匠リチャード・エア監督。オスカー女優のジュディ・デンチケイト・ブランシェット壮絶な演技バトルを繰り広げ、孤独が生み出した女のしたたかさと恐ろしさをまざまざと見せつけます。

2006年度のアカデミー賞ではデンチとブランシェットが、それそれ主演女優、助演女優賞にノミネートされました。


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