ムーラン・ルージュ(2001)
愛の物語を語るのは現代ポップスのヒットナンバーと享楽のダンス
片時も目が離せない バズ・ラーマンが描くムーラン・ルージュの世界
オペラの演出家として活躍したバズ・ラーマン監督は、映画界では『ダンシング・ヒーロー』(’92年)や『ロミオ&ジュリエット』(’96年)で〈レッド・カーテン・シネマ〉と形容される、スクリーンを舞台に見立てて物語世界へ引き込む手法を確立しました。
加えて、センスの良い音楽、斬新な古典解釈も高く評価されていましたが、本作はそんなラーマン監督の神髄が詰まった作品です。
19世紀末のパリ、華美な装飾で扇情的なムードを演出した悪名高いナイトクラブ、〈ムーラン・ルージュ〉を舞台に、ミュージカル、映画、演劇という娯楽形態をミックスしたユニークな世界を作り上げたラーマン監督は、本作で1940年~50年代にかけてハリウッドで台頭したミュージカル映画を鮮やかに復活させました。
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【ストーリー】
英国出身の若者クリスチャン(ユアン・マクレガー)は作家を目指し、パリ・モンマルトルの安宿で暮らしていましたが、創作活動に必要な恋愛経験が無いことに落ち込んでいました。
ひょんなことから新進気鋭の画家ロートレック(ジョン・レグイザモ)と知り合ったクリスチャンは経営の傾いたキャバレー、〈ムーラン・ルージュ〉の歌を書くことになります。
やがて、クリスチャンはクラブのスターである高級娼婦サティーン(ニコール・キッドマン)と恋に落ちます。
しかし、2人の恋は強欲な〈ムーラン・ルージュ〉の経営者、ジドラー(ジム・ブロードベント)や、サティーンのパトロンになろうとする邪悪な公爵(リチャード・ロクスバーグ)により、阻まれてしまいます。
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赤いカーテンの幕が開き、愛の素晴らしさを謳い上げるショータイムが始まります。
描かれるのは、薄幸の高級娼婦サティーンと彼女へ真実の愛を捧げた貧乏作家クリスチャンの悲恋の物語ですが、暗さがまったくないのはミュージカル要素のため。
ふたりの愛を語るのはビートルズ、エルトン・ジョン、マドンナなど、20世紀を代表するポップスの名曲たち。
そして、キャラクターの感情が込められた歌にのってスクリーンいっぱいに繰り広げられるのは官能的なフレンチカンカン、躍動的なラップ、幻想的なワルツ、刹那的なタンゴなど、享楽のダンスワールド。
ニコール・キッドマンやユアン・マクレガーなど、実際にキャストたちが歌い躍り、華やかな空間が形成されます。
全ショットが幻想的なセットを組んだサウンドステージで撮影され、後から300ショットにのぼるデジタル処理を施し、人工的でリアルな空間を強調しているそうです。
クライマックスシーンはストーリーと一体化した劇中劇で幕が閉じ、圧巻です。
ラーマン監督は本作を〈ウェイク・アップ〉映画と呼んだそうです。めくるめくばかりに様変わりする世界は片時も目が離せません!