マン・オン・ザ・ムーン(1999)
不世出のエンターテイナー、アンディ・カフマン
彼を愛する人々が作り上げた、奇抜で温かい伝記映画
コメディアンでありながら、観客を笑わせて楽しませるだけでなく、時には凡庸な芸で退屈させたり、過激な言葉で挑発したりして、怒りさえも与えてしまう予測不可能なパフォーマンスで注目を浴びたアンディ・カフマン。
しかし、彼が見せたパフォーマンスの数々は、「人生は驚きの連続であること」、そして、そんな人生を心から楽しむことの素晴らしさを謳った人生賛歌だったのかもしれません。
惜しくもアンディ・カフマンは1984年に35歳の若さでこの世を去りましたが、それから約25年の時を経た1999年、不世出のエンターテイナーの雄姿を再び観たいと願った人々の手によって、最高の映画が製作されました。
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【ストーリー】
アンディ・カフマン(ジム・キャリー)は子どもの頃からの夢だったコメディアンになり、各地のコメディクラブを巡業していました。そんな時、有名プロデューサー、ジョージ・シャピロ(ダニー・デビート)の目に留まり、人気コメディ番組「サタデー・ナイト・クラブ」への出演をきっかけに、スターの仲間入りを果たします。
やがてアンディは奇抜な芸風で人気を博すようになります。女性蔑視発言をして、全米の女性を挑発し、本気で女性チャレンジャーとレスリングをしたり、男性プロレスラーと戦って首を損傷したり、さらには、デブのラウンジ歌手「トニー・クリフトン」を登場させ、毒舌を吐きまくったり……。
そんな過激な芸風が物議を醸すなか、アンディは病魔に侵されてしまいます。
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製作総指揮のジョージ・シャピロとボブ・ズムダはアンディを支えたスタッフとして、製作と出演を兼ねた俳優ダニー・デビートはアンディの出世作であるシチュエーションテレビ・コメディ『タクシー』の共演者として、ほかにも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのドク役でおなじみのクリストファー・ロイドを始め、ジェリー・ローラー、キャロル・ケインら、アンディとともにコメディ界を歩んできた仲間たちがカメオ出演して、アンディ・カフマンの伝説を盛り上げています。
監督は『カッコーの巣の上で』(’75年)、『アマデウス』(’84年)で2度のアカデミー賞に輝くミロシュ・フォアマン。本作では、第50回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員特別賞)に輝きました。
そして、アンディを演じた主演のジム・キャリーは、初めてコメディではなくヒューマンドラマ主演作となった『トゥルーマン・ショー』(’98年)に続いて2年連続ゴールデングローブ賞主演男優賞に輝き、ハリウッドでのキャリアを不動のものにしました。
周囲に何を言われようとも、我がコメディアン道を貫いたアンディの魂が乗り移ったかのようなジムの、アンディへの熱い思いが込められた“怪演”は見ものです。