映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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引っ越し大名(2019)

大名たちの壮大な引っ越しを描く
ほのぼのとした味わいのある時代劇

江戸時代、幕府が大名に領地の移し替えを命じる、“国替え”と呼ばれる制度がありました。命令の下った大名は、藩の家臣とその家族すべてを引き連れ、新しい領地へ移るのですが、時には1万人にも上る規模の藩を丸ごと移動させるとなれば、物理的にも経済的にも、その苦労は容易にうかがい知れます。

本作は、そんな“武士のお引っ越し”をめぐる、てんやわんやの大騒動を描くコメディタッチの時代劇。ほんわかした人柄が魅力の星野原が、無理やり“引っ越し奉行”に任命された、内気で引きこもりの侍をコミカルに演じています。

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【ストーリー】
姫路藩の藩主、松平直矩(及川光博)に日田(大分)への国替えが命じられます。ところが、これまで国替えを仕切っていた大名がすでに亡くなっていたため、困った家老たちは、本ばかり読んでいるから、いろんな知識があるのでは、と書庫番の片桐春之助(星野原)に目を付けます。
春之助は人と話すのが苦手で書庫にこもっていただけなのですが、「断れば切腹」と家老たちに迫られ、泣く泣く“引っ越し奉行”の大役を引き受けます。

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広大な城の整理や、財政による引っ越し費用の削減など、途方もなく面倒な任務を、春之助がビビりながらも成し遂げていく過程がユーモアたっぷりに描かれます。

春之助の幼なじみでお調子者の侍・廣村源右衛門役の高橋一生の弾けっぷり、前引っ越し侍の娘で、ヘタレな春之助を叱咤激励する於蘭役の高畑充希の小気味よい演技など、芸達者な俳優たちが豊かなキャラクター造形で、映画を楽しく盛り上げます。

全編笑って観ていられますが、上司の命令に翻弄されるサラリーマンの悲哀を連想させる展開も本作の妙味です。

のぼうの城』の犬童一心監督が、闘いを強いられる侍たちの“引っ越し”という、人間味あふれる日常に光を当てた、味わいのある作品です。


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