映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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ハリエット(2020)

不屈の黒人奴隷女性の苦闘を描く
心に染みる愛と勇気の物語

アフリカ系アメリカ人として、史上初めて新しい米ドル紙幣に肖像が採用された実在の奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの壮絶な闘いの日々が描かれています。

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1822年、メリーランド州で黒人奴隷の家庭に生まれたハリエット、通称“ミンティ”(シンシア・エリヴォ)は6歳から家族とともにブローダス家の農場で働いてきました。
1844年、ハリエットは自由黒人のジョンと結婚し、希望を見い出すものの、自身や家族が得るはずの自由な身分を農場主のエドワードに反故にされ、さらに農場の借金返済のために、売り飛ばされそうになってしまいます。
すでに3人の姉が売られ、消息不明になっていたことから、ハリエットは「家族と二度と会えないくらいなら」と地元でひそかに活動していた“地下鉄道”の手を借りて、奴隷制が撤廃されていたフィラデルフィアを目指して脱走します。

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黒人奴隷制度を描いた物語を見るのは本当に辛いです。本作でも、冒頭から白人のブローダス家による冷たい仕打ちにじっと耐えるハリエットら黒人奴隷たちの姿が描かれ、胸が痛くなります。

そして、ハリエットの脱走シーンも、彼女を執拗に追うブローダス家の長男ギデオン(ジョー・アルウィン)の狂気が充満し、奴隷たちの感じた恐ろしさがひしひしと伝わってきます。

命をかけてフィラデルフィアへたどり着き、自由を手にしたハリエット。しかし、ジョンを救い出すため、再び故郷へ向かいます。それ以来、何度も黒人奴隷たちを救い出したハリエットに対し、白人たちはハンターたちを雇って、奴隷泥棒を捕えようとします。

それでも、不屈の精神で立ち向かうハリエットの姿に感銘を受けますが、彼女の心の支えになる両親や、奴隷の逃亡を助ける地下組織の面々など、善良な人々の存在にも胸を打たれます。

主に舞台で活躍する実力派スター、シンシア・エリヴォを始め、俳優陣のキャラクター造形が巧みで感情移入を誘います。シンシアはアカデミー賞主演女優賞のほか、自ら歌うテーマ曲「スタンド・アップ」がアカデミー賞歌曲賞候補になりました。

シリアスなストーリーですが、奴隷制に関する細かい設定が丁寧に盛り込まれており、悲惨な史実を追随することで新たな発見があります。現代を平和にするための勇気と愛の物語として、多くの人に見てほしいです。

ちなみに、ハリエットの新札は2020年に発表されることになっていましたが、トランプ政権になり、2028年に延期されたそうです。またまた残念なことが起こっています。


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