ライフ・イズ・ビューティフル(1997)
どんな状況でも、大切な家族を愛し抜く
笑いと涙に溢れた珠玉のヒューマンドラマ
第2次世界大戦下の北イタリアを舞台に、ナチス・ドイツの強制収容所へ収監されたユダヤ系イタリア人親子の愛と絆を描いた感動作です。
イタリアの喜劇俳優ロベルト・ベニーニが監督・主演・共同脚本を務め、第51回カンヌ映画祭で審査員グランプリを受賞。米アカデミー賞に作品賞ほか7部門にノミネートされ、ロベルト・ベニーニが主演男優賞を受賞しました。
「人生は美しい」と言える「人生」とは、どんなものなのでしょうか? いかにも感動作めいたタイトルは作品に対するハードルを格段に上げますが、本作はその高いハードルを軽やかに乗り越え、十分すぎるほどに感動を与えてくれます。
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【ストーリー】
第2次世界大戦前夜の1939年。ユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)は叔父エリゼオ(ジュスティーノ・ドゥラーノ)の家で暮らすため、北イタリアの田舎町へやってきます。そして、納屋の2階から落ちてきた女性ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)と出会い、一目ぼれします。
ドーラのことを「お姫様」と呼ぶグイドは、彼女の行く先々に現れては猛アタック。突飛かつ熱烈なグイドの求愛はロマンティックで優しく、他の男性と婚約を控えたドーラのハートを見事に射止めます。
そして、駆け落ち同然で結婚した2人は、1人息子のジョズエ(ジョルジョ・カンタリーニ)をもうけ、幸せに暮らしていました。
ところが、戦時色が濃くなり、北イタリアに駐留したナチス・ドイツにより、グイドとジョズエ、エリゼオは強制収容所へ送られてしまいます。
突如、母親と引き離され不安がるジョズエに、グイドは「これはゲーム。1000点取って、1位になれば戦車がもらえるんだ!」と噓をつき、ジョズエを楽しませようとします。
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強制収容を舞台にした悲しい戦争映画と思いきや、物語の前半部分は、グイドがドーラと結婚するまでのエピソードがコメディタッチでたっぷりと描かれ、ちょっと拍子抜けするかもしれません。
陽気なグイドの突拍子もない求愛に、ドーラは驚きつつも、思わず笑い、心を許し、惹かれていきます。まるでチャップリンのドタバタコメディを彷彿させる、前半のコメディパートは、ユーモアのセンスが洒落ていて、テンポもよく、素直に楽しめます。
ここでグイドの底抜けの明るさと、愛情の深さ、一途に希望を信じる純粋さを徹底的に描くことで、後半部分のグイドの行動に説得力が出てきます。
強制収容所へ送られたグイドは、絶望的な収容所の生活をゲームに見立て、ジョズエが不安にならないようにします。このシリアスなパートでも、ユーモアは健在。グイドがジョズエに希望を持たせるために、とっさに作り出すゲームの設定の数々に、思わず笑ってしまいます。
そんなグイドの言葉に、瞳をキラキラと輝かせて聞き入るジョズエがかわいくて、何とも微笑ましいのですが、ドイツ兵に悟られたら最後、死と隣合わせのゲームは緊張感たっぷりで、最後までハラハラさせられます。
ジョズエの風呂嫌いや、ドイツ軍医との出会いなど、前半部分の設定が後半部分できっちり生きてくる脚本がとても良いです。そして、物語冒頭からずっと描かれた、底抜けに明るくて、愛情深いグイドのキャラクター性を見事に活かしたクライマックスシーンは本当に素晴らしいです。ジョズエを守るために、まさに“哀しきピエロ”に徹したグイドの姿に、私は涙が止まりませんでした。
大切な人をとことん愛し、守り抜いたグイドの人生は本当に「美しい!」と言えます。翻って、私はこれほど全身全霊をかけて、大切な人を守れているのだろうか、と反省してしまいました(;^_^A。
とにもかくにも、心が洗われる良作です。ぜひ観てほしいです!