映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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ストレイ・ドッグ(2019)

汚れ役に挑んだニコール・キッドマン
野心的な女性たちが作る斬新なフィルム・ノワール

主人公は主人公犯罪都市ロサンゼルスの闇の中で、まさにストレイ・ドッグ(野良犬)のようにさまよう女刑事エリン。

ハリウッドきっての美貌を誇る女優ニコール・キッドマンが、顔に特殊メイクを施して、身も心も荒みきった孤独なエリンを熱演しています。

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【ストーリー】
陽光まぶしいロサンゼルス。車の中で目覚めたエリン・ベル刑事(ニコール・キッドマン)は気だるそうに犯罪現場へ向かいます。うつぶせになった男の死体を一瞥したエリンは、「犯人を知っている」と謎めいた言葉をつぶやき立ち去ります。
エリンは市警宛てに届いた差出人不明の私信から、紫に染まった1ドル紙幣を見つけます。それは以前、エリンが関わった未解決事件のものと判明しました。
17年前、FBI捜査官だったエリンは同僚の捜査官クリス(セバスチャン・スタン)と恋人を装い、サイラス(トビー・ケベル)率いる犯罪組織へ潜入し、逮捕の機会をうかがっていましたが、銀行強盗に及んだ一味を現行犯逮捕しようとした際、エリンは取り返しのつかない過ちを犯し、サイラスは逃亡、事件は迷宮入りになっていました。
以来、エリンは罪悪感にさいなまれ、後に夫となったイーサン(スクート・マクネイリー)とも別れ、16歳の一人娘シェルビー(ジェイド・ペティジョン)との関係もうまくいかず、酒に溺れる日々を送っていました。紫に染まった紙幣は、「LAに戻った」というサイラスからのメッセージだったのです。

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サイラスの情報を求めて、彼の仲間たちの元へ向かうエリン。その過程で、エリンの激しい狂暴性や、娘に疎まれる孤独な日々が浮かび上がります。狙った獲物をまるで野良犬のように執拗に追うエリンは強烈な狂気を放ちます。

女性を主人公にした異色のフィルム・ノワール映画です。

初めて刑事役に挑んだニコールは激しい暴力シーンや銃撃戦を果敢にこなす一方で、心に闇が巣くうエリンの複雑な人間性を巧みに表しました。

誰にも言えない過去の秘密を抱えたことから、娘にさえも心を開けず、孤独になっていくエリン。オスカーを獲得した『めぐりあう時間たち』を始め、さまざまな人間ドラマのキャラクターを演じてきたニコールならではの斬新な女刑事像に注目です。

『ガールファイト』『インビテーション』の女流監督カリン・クサマがメガホンをとり、撮影監督も女性のジュリー・カークウッドが務めています。ニコールは脚本を読み、出演を熱望したといいます。

そんな野心的な女性たちの意欲作をじっくり味わってほしいです。


ストレイ・ドッグ(字幕版)