映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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トロイ(2004)

戦いを余儀なくされた古代ギリシャ人たち
伝説のトロイ戦争が伝える戦争否定のメッセージ

21世紀の現代で、これほど戦争が身近なものになるとはだれが予想したでしょうか。

本作が製作されたのは2004年。アメリカが主導したイラク戦争開戦から1年後のことでした。3000年前の古代ギリシャを舞台にした伝説のトロイ戦争の映画化は、まさにベストなタイミングで完成しました。

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【ストーリー】
紀元前12世紀。都市国家トロイとギリシャの強国スパルタは長年にわたり、激しい戦闘を繰り広げていましたが、ギリシャ軍最強の戦士アキレス(ブラッド・ピット)の登場で、両国は和平を結びます。
その夜、トロイのヘクトル王子(エリック・バナ)の弟パリス(オーランド・ブルーム)とスパルタのメネラオス王の妻ヘレン(ダイアン・クルーガー)が禁断の恋に落ち、パリスがヘレンを国へ連れ帰ってしまいます。

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トロイの王子パリスとスパルタの王妃ヘレンとの許されぬ愛に始まり、ギリシャ軍の巨大木馬による奇策で幕を閉じたドラマチックな戦争。

ストーリーのベースになるのは、古代ギリシャ叙事詩ホメロスがこの伝説の戦争を悲しくも美しいギリシャ神話に昇華した『イリアス』です。

しかし、本作では神話の持つ神秘性を薄め、分裂国家時代に生き、和平のために戦いを余儀なくされた古代ギリシャ人の戦争観を浮かび上がらせます。

名誉回復のため、ヘレン奪回をめざす弟のスパルタ王の助けに応じたギリシャ王アガメムノントロイ攻撃の好機とにらみ、4万の軍を率いてトロイに進軍します。

愛を貫く息子を許したトロイ王プリアモス神の加護と城塞の力を信じ、ギリシャ軍を迎え撃ちます。

トロイのヘクトル王子は戦士という使命を全うすべくトロイの城壁を死守する決意を固めます。そして、野心家のアキレスは歴史に名を残すためにトロイに出陣します。

愛や名誉、誇りのためと言っても、所詮、戦争とは人間の私欲の産物にほかなりません。ならば「犠牲者を減らすことが私欲を求める人間の責任だ」とこの時代では重く受け止められていたように思えます。

まずは話し合い、そして代表者1名による一騎打ちの戦い、それでも駄目なら軍を投入する―。しかし、引き際を見極め、死者には黄泉の川を渡るための金貨を沿えて手厚く弔うのです。

剣と盾しかない原始的なギリシャ兵が人道と秩序を基本に戦うさまが皮肉めいています。

「王が戦うことはない」「多くの妻たちを泣かせるな」。ウォルフガング・ペーターゼン監督は兵士たちに戦争の矛盾を語らせ、はっきりと戦争否定のメッセージを打ち出しました。決して戦争を望んでいない兵士たちによる戦闘シーンには、荒々しさのなかにも悲哀が漂っています。

強靭な肉体を作り、演技面でも新境地を見せたアキレス役のブラッド・ピットの気迫、信義に厚い名将ヘクトル役のエリック・バナの好演、損な役回りのパリス役に挑んだオーランド・ブルームの心意気。

美しい俳優陣に惑わされてはいけません――。芯の通った作品です。

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そして、今は2021年8月ですが、アフガニスタンタリバンの脅威にさらされています。また、シリア、ミャンマーでも……。なぜ戦争は無くならないのでしょうか……。全世界が平和な時代が来るのはいつになるのでしょうか……。悲しいですね。


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