映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

人生に迷えるアラフィフ女性が、映画を通して人生について考える。ネタバレなしの映画レビューサイト。

ターミナル(2004)

空港を舞台に「待つこと」の意味を問いかける
味わい深い都会のファンタジー

人にはだれしも向かう場所があり、帰る場所があるものです。空港は目的地への通過地点にしかすぎないけれど、それぞれの目的地へ向けた人々の思いが最も充満している場所ではないでしょうか。

飛行機を待つ間、目的地での出来事に思いを馳せるうち、ふと考えたことはありませんか。「自分の人生はどこに向かっているのか」と。

日々の暮らしに流されがちですが、心の底に確かに潜む人生への迷い。『ターミナル』は目的地を失った男の姿をとおして、空港=人生のターミナルに漂う人々の迷いに行き先を与えてくれます。

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【ストーリー】
東ヨーロッパの小国クラコウジアからニューヨークにやって来たビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)は、空港で非情な知らせを受けます。クーデターにより祖国が事実上消滅したため、無国籍の彼はアメリカへの入国が認められず、政情が安定するまで帰国もできなくなってしまいます。
空港警備局の主任から「空港で待つしかない」と言われたビクターは9か月にわたり、空港で暮らすことに。
しかし、こんな辛い境遇にも、ビクターは希望を失いません。換金さえできないどん底から自分にできることを地道にこなしていくうちに食事や仕事、仲間を得て、やがて美貌のフライトアテンダントアメリアのハートまで射止めてしまいます。

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空港に棲みついた男という突飛な物語ですが、ビクターへ感情移入するのは簡単です。おかしな状況の中でビクターの不安感や孤独感を際立たせ、一気に物語世界へと引き込むのはスティーブン・スピルバーグ監督と芸達者のトム・ハンクス。その後は空港という舞台を生かしたエピソードの数々、個性豊かな脇役陣の妙演に笑い、感心させられ、ほのぼのとした時間が過ぎます。

イデア、ユーモアの中にアメリカへの皮肉を盛り込んだ語り口、そして何と言ってもテーマが良いです。たいていの映画では、閉塞的な状況を打破するチャレンジ精神を鼓舞するものですが、本作では「待つこと」の意味を問いかけます。

ビクターの心の成長をじっくりと見守りたい。味わい深い都会のファンタジーです。

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【余談ですが……】
今回、この映画を紹介したのは、恐れていた新型コロナの第3波が到来してしまい、「Go Toトラベル」が停止し、再び自粛を余儀なくされている状況が、空港に足止めされたビクターの境遇に重なる気がしたからです。

本当なら空港が最もにぎわっている時期です。自由に動きづらい状況ですが、希望を失わず、いつか自由に動ける日が来ることを願いながら待ちましょう。

ゆっくり過ごせるお正月に、ゆったりとした気分になれるこの映画はとてもおススメです。

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