映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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英国王のスピーチ(2010)

他人の厳しい目ではなく、自分の心を信じて!
コンプレックスに苦しむ英国王の勇気と温かい愛

生きていく上で最も大切なのは、困難な道を共に歩んでくれる信頼できる人々との出会いだと、この映画を観て、しみじみと思いました。

吃音症を克服し、英国民の絶大な信頼を得た前英国王ジョージ6世と、彼を支えた人々との心温まる交流が描かれます。

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【ストーリー】
ジョージ6世コリン・ファース)は幼い頃から吃音に悩んでいました。うまく話せないために自信を失い、弱気で内向的な性格となったジョージは人前に出ることが苦痛でした。
しかし、厳格な父ジョージ5世(マイケル・ガンボン)は、そんなジョージを許さず、さまざまな式典でのスピーチを容赦なく命じていました。

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王の命令に背けないジョージは仕方なく人前でスピーチをし、失敗して、さらに自信を失ってしまいます。そんな負のスパイラルに陥り、苦悩する姿が痛々しいです。

いつも不機嫌そうで、ちょっと尊大な部分もあるのは、ジョージが実直で誠実だからでしょう。立派に公務を果たせない自分への失望、王族の重責を担うかもしれない不安、そして治らない吃音症への焦り。コンプレックスを持つ人特有の屈折した心情に共感できる人は多いのでは。

そんなジョージを支えるのが、妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)と、スピーチ矯正の専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)。寛容なエリザベスはジョージに温かい言葉をかけ、静かに見守り、オーストラリア出身の型破りなライオネルは友達のように接することでジョージの緊張をほぐそうとします。

ライオネルの治療はユニークで痛快です。王の息子たるジョージに臆しないライオネルは、ジョージに彼の周りにいる人々も特別ではないと教えます。

人は誰にも緊張や畏れを抱く必要はありません。だから自分をおとしめ、自信を失う必要もないのです。言葉がうまく出なければ、歌ったり、悪態をついてもいい。他人の厳しい目ではなく、自分の心に従うこと。それが重要なのです!

吃音の演技が見事なコリン・ファースと、ユーモラスなライオネルを飄々と演じるジェフリー・ラッシュが素晴らしいです。製作時は弱冠38歳だった英国人監督トム・フーパーの演出も巧み。ライオネルがジョージを茶化すような愉快なやり取りで笑わせつつ、次第に物語の核心へ迫る展開は緊迫感に溢れています。

なぜジョージが吃音になったのか。父ジョージ5世の死、兄エドワード8世(ガイ・ピアース)の王座の放棄に伴い、ジョージがいよいよ王になる時、ジョージの秘密が明らかになります。

ウェストミンスター寺院の厳粛な雰囲気の中、名優2人の激しいやり取りは見応えたっぷり。ライオネルがジョージに贈る言葉は誰の心にも染みるはずです。

ジョージ6世は現英国女王エリザベスの父。ジョージが吃音を克服し、英国はどう変わっていくのか。物語はイギリスが第2次世界大戦へ参戦するという厳しい試練の中にも、かすかな希望を見いだして終わります。

国史上、最も内気で寡黙と言われる王の物語が世界各地の映画賞を席巻しました。第83回米国アカデミー賞では12部門にノミネートされ、作品賞を含む4部門を受賞。トム・フーバーが監督賞、コリン・ファースが主演男優賞に輝きました。そんな栄冠も納得の滋味深い作品です。

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