人形を愛した孤独な青年が起こす愛のマジック
心優しいキャラクターたちに癒される
孤独な過去に傷つき、心を閉ざした青年ラースと、彼を見つめる人々との不思議な交流を描いたファンタジックなヒューマンドラマ
2007年に製作され、第80回米アカデミー賞の脚本賞にノミネートされました。
日本ではあまり注目されませんでしたが、とても良い映画です。
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【ストーリー】
アメリカ中西部の小さな町。ラース(ライアン・ゴズリング)は、生まれ育った自宅を兄夫婦に譲り、敷地内のガレージを改装して暮らしていました。
なぜか人とのつながりを避けるラースは、心優しい義姉カリン(エミリー・モーティマー)や実の兄ガス、会社の同僚達とも打ち解けることなく、単調な毎日を独り静かに過ごしていました。
そんなラースが、インターネットで知り合ったという“彼女”を兄夫婦の家に連れて来ることに。でも、それはインターネットで注文した等身大のリアル・ドールだったのです。
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明らかに人形と分かる“彼女”をビアンカと呼び、恋人として扱うラースや、彼の奇怪な言動に驚き、呆れながらもラースを動揺させまいと話を合わせる兄夫婦。生真面目なキャラクターと滑稽な言動のギャップがたまらなく愉快です。
妄想の原因を突き止めるため、医師の勧めでラースの言動を受け入れることにした兄夫婦は、ビアンカをしばらく家で世話することに。初めは奇異の目で見ていた町の人々もまた、ラースを心配し、ビアンカを生身の女性として扱うことに協力します。
人形を人間のように扱う人々の姿は終始笑いを誘いますが、根底に流れる人々の優しさに終始胸が熱くなります。人々は、ラースとビアンカのカップルを腫れ物に触るように特別に扱うのではなく、厳しくも温かい愛で包みます。
“時間のある”ビアンカにはショーウィンドウのモデルやデイケアなどの “仕事”を次々と紹介し、自分の時間を持ったビアンカに苛立ちを募らせるラースには「彼女の自立を認めなさい」と説教します。生身の人間として愛されたラースと、その彼女の反応は……。
奇をてらった題材ですが、語り口は素朴で穏やか。物語が進み、人々の愛を一心に受けるに従い、ちょっぴり不気味なビアンカが愛しい女性に見えてくるから不思議。これぞ愛のマジックか?!
小粒ですが、優しく、温かな愛に溢れた味わい深い良作です。
『きみの読む物語』『ラ・ラ・ランド』の演技派ライアン・ゴズリングがピュアで健気なラースを演じて、ゴールデングローブ賞 映画部門 主演男優賞(ドラマ部門)にノミネートされました。