映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

人生に迷えるアラフィフ女性が、映画を通して人生について考える。ネタバレなしの映画レビューサイト。

美女と野獣(1991、2002)

《他者への優しさ》を知る、未熟な野獣の心の成長に共感
美しい映像とストーリーで魅了する名作ディズニーアニメ

心の醜い野獣と、愛に溢れる聡明な美女ベルのラブストーリーはいつまでも色褪せません

アニメ史上初めてアカデミー作品賞にノミネートされたディズニーアニメ映画『美女と野獣』(’91年)は、『リトル・マーメイド』(’89年)から始まるディズニー第2次黄金期を象徴する作品です。

でも、その評価がディズニーアニメの枠に留まることの無いことは、今さら語るまでもないでしょう。

本作の公開当時、大学生だった私は女友達4人と映画館へ観に行き、4回泣きました。途中から気づいた友人に映画を観終わった後、爆笑され、かなり後まで笑い種にされました( ´艸`)が、愛を知らない野獣の“いじらしさ”に、とにかく涙が止まらなかったのです。

******

【ストーリー】
美しくも傲慢な王子は、一晩の宿を求めた老婆の願いを、彼女の醜い容姿のために断り、追い返してしまいます。すると老婆は美しい魔女へと姿を変え、人を見かけで判断した王子を醜い野獣へと変えてしまいます。彼が元に戻るためには、冷たい心を溶かし、「真実の愛」を知ることが必要でした。
一方、とある街に、発明家の父モーリスと暮らすベルは美しく、聡明で父親思いの女性でした。ある日、発明大会へ出かけたモーリスが誤って野獣の城に迷い込み、野獣に捕えられてしまいます。すると、ベルは父を救い出すために、父の身代わりとなり、野獣の城へ残る決心をします。
こうして、心優しい美女ベルは恐ろしい野獣と2人で暮らすことになります。

******

醜い心のために、醜い野獣にされてしまった王子は、世捨て人のように孤独な日々を送っていましたが、それでも改心することはなく、ベルにも横暴な態度を取ります。

ベルはそんな野獣に我慢ができず、城を飛び出しますが、森の中でオオカミに襲われそうになってしまいます。オオカミがベルを襲おうとしたとき、飛び出してきたのは野獣でした。

ベルを心配し、傷だらけになりながらも、オオカミと戦い抜いた野獣。危険を顧みず、なりふり構わず、ただベルを救おうとする野獣は本当にカッコよかった――
そして、彼の行為が“優しさ”から来ることを、当の野獣が気づいていないところがいじらしくて、泣けてきます。

そんな不器用な野獣が、彼の優しさに気づいたベルと少しずつ距離を縮めていく中盤は、微笑ましくも、ベルの愛に応えようとする野獣のひたむきな姿に泣けました。

さらに、魔女の呪いで、ティーポットや置き時計などの家財道具に変えられてしまった城の家臣たちにも泣かされました。愛らしい風貌をした彼らはとってもお茶目で、ユーモラスなのですが、根底には野獣を信じる優しさがありました。野獣の改心を健気に待つ家臣たちの“いじらしさ”もたまりません!

ベルを我が物にしようとする、ハンサムだが下品な自惚れ屋、ガストンが加わったラブストーリーは波乱の連続で、アクションシーンもスリリングで見応えたっぷりです。クライマックスでの、野獣とガストンとの死闘は、心から野獣を応援せずにはいられません

こんなにも涙腺を刺激されたのは、キャラクターの表情が素晴らしいからでしょう。優しい気持ちを持ち始めた野獣の、困ったような不安げな表情。孤独の哀しみを強がることで押し殺してきた野獣の、なんといじらしいこと! 未熟な野獣が少しずつ心を成長させていく姿は、私の心に深く刺さりました。

本作が多くの人の心を捉えるのは、《他人への優しさや思いやりの心》が溢れているからでしょう。

****************************************************

映画公開から11年後の2002年にリバイバル上映された『美女と野獣』には、大きなスケールの舞台が用意されました。

‘91年製作のオリジナルにデジタル処理を施した映像の鮮明さと、前作ではカットされた7分間のミュージカルナンバー『ヒューマン・アゲイン』の復活が目玉となり、2002年1月1日より全世界同時公開された劇場版は、ラージスクリーンフォーマット版として、アイマックスシアターで上映されました。

陰鬱さと獰猛さの中に深い孤独と絶望を滲ませる野獣の姿が物語のキーになりますが、鮮明な映像の効果は野獣の造型に最も発揮されています。美しい恐怖が加わり、より重厚で芸術性の高いアニメ作品となりました。


美女と野獣 (字幕版)


美女と野獣 MovieNEX [ ペイジ・オハラ ]