映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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花束みたいな恋をした(2021)

自然でリアルな会話劇で描き出す
切なくもピュアなラブストーリー

高視聴率を記録したトレンディドラマ『東京ラブストーリー』や、母娘の絆を衝撃的な設定で問いかけたヒューマンドラマ『Mother』、他にも『最高の離婚』『西遊記』『Woman』など、多彩なテーマで記録と記憶に残る連続テレビドラマを生み出してきた脚本家・坂元裕二が、映画用に初めてオリジナル脚本を書き下ろした注目作です。

20代の実力派俳優、菅田将暉有村架純の共演も楽しみな本作は、一組の20代の若者のラブストーリーです。

2人の男女が出会い、惹かれ合い、結びつき、反発し、道を違えて別れる……。誰にでも一つや二つはあるはずの恋愛譚をありふれた日常として描き出しています。

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【ストーリー】
2015年、大学生の絹(有村架純)は強引な誘いを断り切れず、大好きなお笑いコンビ、天竺鼠のライブを見損ねたり、終電を逃して朝帰りしたりと、ちょっと冴えないこともあるけれど、普通の日常を送っています。
一方、大学生の麦(菅田将暉)もまた、googleストリートビューに自分が映っているのを見つけて喜んだり、憧れの女性の先輩からカラオケに誘われるも、行ってみるとその先輩はいなかったりと、浮き沈みはあるけれど他愛のない日常を送っています。
そんな2人が明大前駅で終電を逃したことから出会います。ひょんなことから、「押井守が好き」という共通点を発見した2人は居酒屋で語り合ううちに、さらに多くの共通点を発見して意気投合。その後、数回のデートを重ねて交際を始めます。

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ごく普通の男女、絹と麦の21歳から26歳までの5年間の軌跡を描くストーリーで起こる出来事は本当に普通のことばかり。些細なことでも楽しい同棲生活や、夢をあきらめた社会人生活など、多くの人が経験しそうな人生の機微を淡々と描いていきます。

そんなシンプルなストーリーを見応えのあるものにしているのは、リアリティにこだわった会話です。

実在の芸能人や作家、書籍やゲームなどの話で盛り上がる2人は本当に普通のキャラクターに見え、だからこそ、人生の転換期で悩む2人にどっぷり感情移入させられます。変幻自在の菅田と素朴な有村が好演し、ほぼ絹と麦の2人劇を飽きさせません。

監督は『愛していると言ってくれ』『ビューティフルライフ』『逃げるは恥だが役に立つ』など、TBSの名作テレビドラマを製作してきた土井裕泰。坂元の人気作『カルテット』も手掛けています。

学生から社会人へと移る20代。甘酸っぱさとほろ苦さが入り混じる20代ならではの心の移ろいを留め、ピュアな気持を呼び覚ましてくれる作品です。


花束みたいな恋をした 通常版 [DVD]