映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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空気人形(2009)

「心」があるからこそ感じる、生きる喜びと苦しみを描く
殺伐とした現代社会を癒す切なくも優しいラブストーリー

『誰も知らない』『歩いても歩いても』の是枝裕和監督が寂しい現代人に贈るラブファンタジー。空気人形とは男性が性的欲求を満たすための等身大人形のこと。

「心」を吹き込まれた空気人形の恋と現実が描かれます。

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【ストーリー】
独身の秀雄(板尾創路)が侘しい生活を満たすために購入した空気人形(ペ・ドゥナ)が、ある朝、突然、「心」を持ちます。秀雄の出勤後、目覚めた空気人形は自分の体や窓の外に広がる景色などを不思議そうに眺めると、着せ替え用に秀雄が買った洋服の中から、メイド服を選び出し、町へ繰り出します。
メイド服で散歩する少女を奇異の目で見る通行人をよそに、初めて見る外の世界に心躍らせる空気人形。ふらりと立ち寄ったレンタルビデオ店で働く青年・純一(井浦新)に惹かれた空気人形は、やがてその店でアルバイトを始めます。

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昼は人形であることを、夜は人間となったことを悟られないようにする空気人形のスリリングな日常がほのぼのとしたタッチで綴られます。

化粧で体の継ぎ目を隠したり、言葉や映画をメモして覚えたり、周囲の人々の行動を真似したり、少しでも人間に近づこうとする空気人形が愛らしく、いじらしい

純一への恋にときめく幸せな毎日。しかし、夜には秀雄の元へ帰り、性行為を受け入れざるを得ません。それが空気人形の役目、自分は空っぽな誰かの「代用品」と知っている空気人形の悲しみは深いのです。

「心」があるからこそ感じる、生きる喜びと苦しみ。相反する感情を抱え、現実の厳しさを知った空気人形は、「心」を持った理由を探し始めます。

「心」を持つとはどういうことなのか。世知辛い世の中、忙しない日常の中で、そんな根本的な問題を考える機会はなかなか少ないでしょう。思うままにならない人生に心が満たされないと感じる人も多いはず。空虚な心を満たす手立てを、是枝監督は純粋無垢な空気人形の儚い恋を通して示そうとします。

愛くるしい顔立ちとスレンダーなボディがまるで本当に人形のような韓国人女優ペ・ドゥナが当たり役。この映画には不可欠な全裸シーンにも臆せず挑んだ勇気も素晴らしいです。

空気人形が醸すゆったりとした浮遊感、孤独な人々が放つひんやりとした空虚感を体感させる映像世界も秀逸。原作は業田良家の短編コミック『ゴーダ哲学堂 空気人形』。

空気人形

空気人形

  • 発売日: 2016/05/01
  • メディア: Prime Video
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  • メディア: Blu-ray


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