激動の昭和に生きた強く優しい母
山田洋次監督が穏やかに紡ぐ家族の愛と絆の物語
『たそがれ清兵衛』『武士の一分』など、巨匠・山田洋次監督が新境地を開いた時代劇三部作で描いたのは、誠実で慎ましく生きる人々が、理不尽な社会の掟や傲慢な人間の悪意により、突然降りかかった悲劇に抗う姿でした。
下級武士から母親へと、被写体は変化しても、試練の道を懸命に進む心優しき人々を讃える監督の思いは本作にもしっかりと受け継がれています。
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【ストーリー】
昭和15年。東京に暮らす野上家は、ドイツ文学者の父・滋(坂東三津五郎)の方針で、両親を「父(とお)べえ」「母(かあ)べえ」、小学生の二人の娘を「初べえ」「照べえ」と愛称で呼び合う仲睦まじい家族でした。
しかし、反戦を唱える滋が、治安維持法違反で逮捕されてしまったことから、妻・佳代(吉永小百合)の奮闘の日々が始まります。
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父の不在を守り、精神的、経済的に家族を支える佳代の姿が、子供たちや周囲の人々の交流とともに描かれます。
拘留の長引く夫を励まし、不安と悲しみに沈む子供たちに希望を与え、決して弱音をはかない佳代。壊れかけた家族の絆を懸命に繋ぎとめようとする強く優しい母の姿がここにあります。
原作は黒沢明監督のスクリプターとして活躍した野上照子の自伝的小説『父へのレクイエム』。日本が太平洋戦争へと突入した暗黒の時代、悲しい体験の記録ですが、山田監督は滋のかつての教え子で佳代を助ける山ちゃん(浅野忠信)や、伯父の仙吉(笑福亭鶴瓶)など、人間味溢れるキャラクターを配し、終始、穏やかなトーンで描きました。
辛い現実に負けず、愛と思いやりを持って精一杯生きようと努力した人々の物語。殺伐とした社会に生きる現代人向けた希望のメッセージが込められています。
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