映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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人魚が眠る家(2018)

東野圭吾原作の重厚な人間ドラマ
最愛の娘の生と死に直面した夫婦の葛藤を描く

東野圭吾のデビュー30周年記念作となる原作は、“倫理観”について大胆に切り込むヒューマンドラマです。

事故で意識不明のまま眠り続ける娘を“育てる”母親の姿がミステリータッチで描かれています。

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【ストーリー】
薫子(篠原涼子)は、IT機器メーカー、ハリマテクスを経営する夫・和昌(西島秀俊)と別居し、幼い2人の子どもたちを育てていました。夫婦は、娘・瑞穂の小学校受験が終わったら、離婚することになっています。そんなある日、瑞穂がプールで溺れ、「脳死の可能性が高く、回復の見込みはない」と診断されてしまいます。
脳死判定の日、最後に握りしめた瑞穂の手が一瞬動いたのを見た薫子は、「娘は、生きています」と叫び、奇跡を信じて、瑞穂の看護をはじめます。
プールに付き添った薫子の母・千鶴子(松坂慶子)は、強い責任を感じ、懸命に瑞穂の世話を手伝います。そして、和昌は、自社の研究員・星野(坂口健太郎)が開発を進める最先端技術ANCが、娘の身体に活かせるのではと思いつきます。
ANCは脊髄に直接信号を送ることで体の筋肉を人工的に動かし、健康体を維持するという世界でも前例のない研究でした。ANCのおかげで、健康体を維持したまま成長し、簡単な動作も可能になった瑞穂の姿に喜ぶ薫子。
しかし、意識のない瑞穂を普通の子どもと同じように扱う薫子に家族や周囲は困惑し、やがて思わぬ事件が起こります。

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ただ純粋に娘の回復を信じる薫子が、次第に狂気の母親へと変わっていく過程が描かれます。

確かに薫子の取る行動は常軌を逸していますが、愛する人に「ただ生きていてほしい」と願うことが間違っているのでしょうか。人間の生と死の境を、人間が判断する「脳死」という重いテーマを通し、究極の愛について考えさせます。

過酷な運命に翻弄される薫子を体当たりで演じた篠原涼子の好演が光っています。

監督は、『TRICK』シリーズ、『明日の記憶』など、エンターテイメント作から骨太ドラマまで手がける鬼才・堤幸彦

すべての登場人物に共感できる重厚な人間ドラマは必見です。


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