映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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マイマイ新子と千年の魔法(2009)

片渕須直監督・脚本の秀作アニメーション
無邪気な子どもたちの純粋な勇気が胸を打つ

太平洋戦争下の広島を舞台にしたアニメーション『この世界の片隅に』(’16年)が高い評価を受けた片渕須直監督が2009年に発表した作品です。

原作は芥川賞作家・高樹のぶ子が幼少時代をモデルに描いた自伝的小説。昭和30年代前半の山口県防府市国衙(くにが)を舞台に、小学3年生の少女・新子の大らかで温かくて、ちょっぴり切ない日常が描かれています。

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【ストーリー】
おでこにマイマイ(つむじ)があるためか、いつも前髪が跳ね上がっている新子は、元気で好奇心旺盛な女の子。かつて「周防の国」と呼ばれた郷土の歴史を祖父から聞き、1000年前の平安時代の様子を空想するのが大好きでした。空想の主人公はやんちゃなお姫様、諾子(なぎこ)。都から「周防の国」へ移ってきた諾子は豊かな暮らしにも関わらず寂しそう。お姫様である諾子には、一緒に遊べる友達がいなかったのです。
ある日、新子のクラスに東京から転校生・貴伊子がやってきます。田舎の子どもたちはハイソな貴伊子を遠巻きに見つめるだけで、引っ込み思案の貴伊子もなかなかクラスになじめません。そんな貴伊子に声をかけたのは新子でした。

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ウィスキーボンボンの食べ過ぎで酔っぱらってしまったり、新子の空想話で盛り上がったり、他愛ない出来事を通して対照的な2人の少女が打ち解けていく姿が微笑ましいです。

新しい友達ができる時の緊張と喜びが交錯する、子ども時代特有の甘酸っぱい気持ちがよみがえってきます。

明るく、気さくな新子のおかげで、鼻タレ小僧の同級生シゲルや、クールな上級生タツヨシらも遊び仲間に加わり、緑豊かな自然での冒険はスケールアップ。内気な貴伊子も本当に楽しそう!

しかし、友達と無邪気に遊ぶ子どもたちは、大人のシビアな現実にも直面することになります。

友達思いの新子の勇気と正義に溢れた行動が、新子を慕う貴伊子や新子の創造した諾子にも勇気を与えます。

生まれてすぐに母を亡くした貴伊子、息苦しい屋敷暮らしを強いられる諾子は、それぞれの悩みを乗り越えようと行動します。そんな純粋な少女たちがひたむき変わろうとする姿は観る者の胸を熱くします。

今の時代、輝く「明日」を信じて生きることは難しいかもしれません。でも、困難もあるけれど、幸せに生きる術もあります。

家族や友達との絆、自然の恵みや無限の想像力……

決して失くしてはならない人間の魂がこの作品で再発見できます。子どもはもちろん、大人の心にも響く秀作アニメーションです。


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