映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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プライベート・ライアン(1998)

衝撃的な戦闘シーンをたたみかけて、問いかける命の重み
ヒューマニストスピルバーグが成しえた真実の戦争フィルム

戦禍の中、8人の兵士の命をかけて、たった1人の兵士を探しに行くという物語は、ヒューマニストスティーブン・スピルバーグ監督の食指を動かしました。

戦争ものを良しとしない人でも、無意味な戦場で理不尽な任務を受けた兵士たちからメッセージを受け取ることができるでしょう。

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【ストーリー】
第二次大戦下、アメリカ軍はオハマ(オクラホマ)・ビーチで繰り広げられたノルマンディー上陸作戦を成功させるが、敵国ドイツとの激戦で多くの兵士の命が失われました。
そんななか、レンジャー大隊のミラー大尉(トム・ハンクス)はある1人の兵士を捜索するよう命じられます。
その兵士とはジェームズ・ライアン二等兵マット・デイモン)。ライアン家の4人兄弟は全員が戦場へ赴き、そのうち3人が戦死してしまいました。そのため、アメリカ軍は唯一生存している末子のジェームズを何としても本国へ帰還させようとしたのです。
ミラーは大勢の兵士たちが命をかけて戦うなか、たった1人の兵士の命を優先する任務に懐疑的になりながらも、6人の部下と通訳の歩兵を連れ、ライアンの捜索へ向かいます。

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フィルム冒頭の30分間、第二次大戦のオハマ・ビーチの戦いを歴史の1ページとして捉えたドキュメンタリータッチの映像はぜひ見るべきものです。

体内から溢れ出る内蔵を止める術もなく横たわる者、ちぎれた自分の片腕を持って徘徊する者、救助に向かった衛生兵は吹き飛ばされ、次々に死体の山が築かれます。

キャメラは兵士から飛び散る血しぶきをぬぐいもせずに、彼らを捉え続けます。そのアングルは地面から45度から90度に保たれ、全編手持ちカメラで撮影されました。

嫌悪感と同時に鮮烈に脳裏に焼き付けられる圧倒的な映像。このシーンだけで6500万ドルの製作費用を投じ、わざとフィルムを劣化させた醜いテクニックで戦争の醜さを伝えています。

映画では、行方の分からないライアンを探す道中での人間ドラマが激しいアクションシーンとともに描かれます。

さまざまな思いを胸に戦場へやってきた兵士たちはライアンたった1人を救うために、次々に命を落としてしまいます。そして、やっと見つけ出したライアンも戦場で任務を全うすることを望みます。

理不尽な戦場で、大儀を果たす兵士たちの姿に命の重さ、儚さ、大切さを痛感せずにはいられません。

ライアンを演じるのは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で注目されたばかりの若きマット・デイモン。優遇されたライアンは一歩間違えば、共感できないキャラクターになっていたところを、抑揚のきいた演技で、誠実さと勇敢さが感じられる好漢に仕上げました。

1999年の米アカデミー賞で11部門にノミネートされ、スピルバーグの2度目の監督賞を始め、5部門でオスカーを獲得したヒューマニズムあふれる戦争映画です。


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