ニューヨーク最高の訳あり物件(2017)
略奪婚したキャリアウーマンと前妻が繰り広げる同居生活の行方
経験豊かな女性たちが魅せる、軽妙洒脱なコメディ映画
ニューヨークの超高級アパートを舞台に描かれるのは、 “訳あり”な2人の女性の熾烈なバトル。
『アンナ・ハーレント』の社会派女流監督マルガレーテ・トロッタ監督が初めてコメディに挑戦し、女性にとって普遍的な問題、“家庭”と“キャリア”について爽快なメッセージを伝えています。
********
【ストーリー】
元モデルのファッションデザイナー、ジェイド(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は、略奪婚した夫ニック(ハルク・ビルギナー)から突然離婚を告げられ、傷心の日々を送っていました。
そんな彼女が住むニューヨークの超高級アパートに、10年前、ジェイドにニックを奪われた、ドイツ人の前妻マリア(カッチャ・リーマン)が押しかけ、住み込んでしまいます。
ニックは前回の離婚の慰謝料として、マリアにアパートの権利を半分与える契約を交わしていたのです。
********
あり得ない状況に憤るジェイドをよそに、着々と自分の暮らしを築いていくマリア。部屋を模様替えしたり、ジェイドのコレクションの高級皿を料理に使ったり……。もちろん、ジェイドも徹底的に応戦します。
ハイソなジェイドと、ナチュラルなマリア。物語前半は対照的な生き方をしてきた2人の女性のプライドと意地をかけた、激しくも微笑ましいバトルがユーモアたっぷりに描かれます。
そんな2人のアパートへ、マリアの娘アントニアが幼い息子パウルを連れて訪ねてきたことで、ジェイドとマリアの関係が変わっていきます。
“義理の娘”に好かれたいジェイドは、植物学者のアントニアに自分のブランドの香水作りを依頼。仕事を通じて意気投合するジェイドとアントニアの姿に、孫パウロの世話を焼かざるを得ないマリアは複雑な気分になります。
文学の博士号を持つものの、子育てのブランクを理由に仕事が見つからないマリアは、かろうじてアパートで文学講座を開くことに。一方、歳の離れたニックと結婚したジェイドは子どもを諦めていました。
酸いも甘いもかみ分けた、40オーバーの女性たちが、思い通りにならない人生の中でも、自分らしい生き方を見つけようと奮闘します。
ニューヨーク出身の女流脚本家パム・カッツによる、各キャラクターの個性やニューヨークの特性を活かした巧妙なストーリー展開が見事。安定感とリアリティを感じさせるベテラン女優陣も最高!
おしゃれで軽やかなコメディですが、ずしりと心に響く作品に仕上がっています。