映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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スリー・ビルボード(2017)

娘を思う母の執念から生まれた3枚のビルボード
見事な作術劇に圧倒される衝撃のクライム・サスペンス

アメリカ、ミズーリ州の田舎町エビング。山間のさびれた道路に掲げられた3枚の看板(ビルボードが何の変哲もない田舎町に嵐を巻き起こします。

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【ストーリー】
3枚の真っ赤な看板に分かれて書かれているのは、「なぜ? ウィロビー署長」「犯人逮捕はまだ?」「レイプされて死亡」というメッセージ。7ヶ月前に娘を殺された母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、捜査が一向に進展しない警察に腹を立て、ケンカを売ったのです。
すると、ミルドレッドは人情味あふれるウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)をおとしめる看板に怒るディクソン巡査(サム・ロックウェル)や町の人々から、非難や嫌がらせを受けるようになってしまいます。
彼女の息子でさえ、姉の悲惨な死を思い出させる看板に反対しますが、どんなに不当な仕打ちを受けても、ミルドレッドは決してひるまず、逆に相手を打ちのめすほどの仕返しをするのです。

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娘を思う母の凄まじい執念にただただ圧倒されます。

捜査の進展を訴える看板が発火点となり、さまざまな驚くべき事件に発展していきます。それらは、毅然と正しいことをする女性に対する、男性の反応が引き起こした事件とも言えるでしょう。

ミルドレッドに侮辱されながらも、彼女に理解を示したウィロビー署長、ミルドレッドに執拗な嫌がらせを行う人種差別主義者で暴力的、人間として堕落しきった警官ディクソン、さらには横暴な元夫チャーリーやミルドレッドを救う友人の男性など、さまざまな男性キャラクターの反応や決断が、人間の生き方や尊厳について深く考えさせます

原題は、「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri(ミズーリ州、エビング郊外の3枚のビルボード」。町中の人々が知り合いであるような、のどかな田舎町が一転、閉鎖的な環境であるがゆえに起こる事件の連鎖。ディクソンのような男の存在など、現在のアメリカが抱える闇の深さを垣間見せる作術劇が見事です。

第90回(2008年度)米アカデミー賞ではフランシス・マクドーマンドが主演女優賞に、サム・ロックウェル助演男優賞に輝きました。2人の狂気をはらんだかのような演技対決も圧巻です。

スリー・ビルボード (字幕版)

スリー・ビルボード (字幕版)

  • 発売日: 2018/05/16
  • メディア: Prime Video


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