映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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スパイダーマン(2002)

カルト映画でならしたサム・ライミ節がうなる
悩めるヒーロー、スパイダーマンに共感

「観客が観たいものなんて分からない。自分が観たいものを作るだけさ」とは、あるハリウッド映画のヒットメーカー製作者の言葉です。

マーベル・コミックスより刊行されてから実に40年を経た2002年、ようやく実写版での映画化にこぎ着けた『スパイダーマン』でも、「『スパイダーマン』は僕のヒーロー」と言うサム・ライミ監督が密かに冒頭の言葉を語っているような気がします。

コミックのコマが矢継ぎ早に登場するオープニングロールは長年待ち望んだコミックファンへのシャレたサービスかと思いきや、私は本編が始まっても、まるで原作のコミックブックを読んでいるような錯覚に陥ってしまいました。

クモの巣が描かれた、ぴったりスーツに身を包み、クモの糸を使って摩天楼を飛び回るアメコミヒーロー、スパイダーマンちょっぴり“ダサめ”な高校生がスーパーヒーローになる物語は全世界で空前の大ヒットを記録しました。

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【ストーリー】
両親を幼くして亡くしたピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、優しい伯父夫婦とともにニューヨーク郊外のクイーンズで暮らすごく平凡な高校3年生。勉強は得意でも目立たないピーターはクラスメートの男の子からはからかわれ、思いを寄せる幼なじみのメリージェーン(キルスティン・ダンスト)にはその存在すら気付いてもらえません。
そんなある日、課外授業で遺伝子を組み替えたスーパースパイダーに刺されてしまったピーターの身体に異変が起こります。動体視力や跳躍力が驚異的にアップし、手のひらから毛羽だった触毛が生え、手首から白い糸が飛び出すという、まるでクモのような特殊パワーを手に入れたピーターは賞金目当てで賭けレスリングに出場し、見事に屈強なレスラーを倒します。
その後、プロモーターに賞金の支払いを渋られたピーターはその腹いせにプロモーターの事務所に押し入った強盗をわざと見逃してしまいます。ところが、この強盗がピーターを迎えに来た伯父のベンを殺害したことから、ピーターは自分の特殊能力を正義のために使うことを決心します。
こうしてニューヨークの事件や事故現場に必ず現われ、人々を助けるスパイダーマンが誕生します。
しかし、世界征服を企む邪悪な怪物、グリーン・ゴブリンがこの特殊能力に目をつけ、スパイダーマンを仲間に引きずり込もうと画策するのでした。

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製作会社が二転三転し、難航を極めた『スパイダーマン』映画化プロジェクトは、カルト映画のヒットメーカーサム・ライミ監督とソニーピクチャーズイメージワークスにより、ようやく実現されました。

スパイダーマンが愛される理由は、苦悩と葛藤を抱えたヒーローが身近な存在に感じられるからでしょう。そんな親近感を表わすべく、映画版では演技巧者のトビー・マグワイアを起用し、人物造形にこだわっています。

1作目では、スパイダーマン誕生の舞台裏で描かれる恋と正義の狭間で悩むピーターの姿がクローズアップされました。地味な印象のトビーも原作のイメージを損なわずに健闘しています。

とはいえ、“マジメ”に描くほど滑稽になるのが、コミックヒーローものの宿命です。そもそも自前でスパイダースーツを作り、脱ぎ着するヒーローです!(笑)いくらマンハッタンのビル群をリアルに飛び回ろうとも、ニューヨーカーの信望を集める大活躍をしようとも、実写になって際立つ人間臭さのために、あまりカッコいいとは言えないのがちょっと残念(;^ω^)。

ただ、映画の中に再現された、往年のアメコミ的な世界観にはうならされます。スパイダーマン誕生からグリーン・ゴブリンとの闘いでの勝利までを主要なエピソードを並べて一気に描いたストーリーには、まるでコミックブックのページを夢中でめくったような充実感があります。

映画版『スパイダーマン』は、ライミ自身が少年時代に夢中になって読みふけったコミックブックのスパイダーマンを描いたのだと思えば、多少、稚拙なスパイダーマン像も納得するしかありません。

でも、〈もしかしたらあなたの隣にいるかもしれない〉ヒーローの成長物語はまだ始まったばかりです。1作目の大ヒットを受けて、パート3までの映画化が決定し、サム・ライミ監督、トビー・マグワイアも続投しました。

ウブなヒーローはこれからどんどん成長し、作品ごとに面白くなっていきます。


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