シティ・オブ・エンジェル(1998)
人間に恋した天使の切ない愛の行方
幻想的な映像美に酔いしれる
人間の女性に恋した天使が人間になる決心をする――。
アーティスティックな映像と、哲学的なストーリーが印象的なドイツ映画『ベルリン・天使の詩』(’87年)をハリウッドがリメイクしたら、メグ・ライアン&ニコラス・ケイジ主演、〈『ゴースト/ニューヨークの幻』の再来〉というキャッチフレーズが付けられたラブストーリーに大変身しました。
実は、正直言って、意外だったのですが、『イングリッシュ・ペイシェント』(’96年)でオスカーを獲得した撮影のジョン・シールが描いた映像世界は繊細で、ヨーロッパの秀作に恥じない作品に仕上がっています。
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【ストーリー】
死を告げる天使セス(ニコラス・ケイジ)は、患者を必死に助けようとする外科医マギー(メグ・ライアン)のひたむきな姿に惹かれ、恋をします。患者の死に責任を感じ、うちひしがれるマギーを思いやるセスは天使の掟を破り、マギーの前に姿を現します。そして、セスの優しさに触れたマギーも彼を愛するようになります。
しかし、天使のままでは人間のマギーを真に愛することができません。かつて人間の女性と結ばれるために人間となった元天使と出会ったセスは、自分も人間になる決心をします。
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主人公の天使は風変わりな黒いコート姿で、いつも高みから人間の営みを見つめています。やがて人間の女性を愛したことから、人間に生まれ変わるというストーリー展開は踏襲しているものの、天使の捉え方は180度違います。
喧騒渦巻く大都会ロサンゼルスに生きる天使はどんなに悲しむ人がいようと、死に逝く運命を受けた者を天国に連れていく悲しい役目を未来永劫に背負い、さらに五感や愛という感情を知らないのです。
愛を貫いて得たもの、失ったもの、メルヘンというにはあまりにも切ない結末が待っています。
監督は『キャスパー』(’95年)以来、2作目の長編映画となるブラッド・シルバーリングが手掛けています。