映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

人生に迷えるアラフィフ女性が、映画を通して人生について考える。ネタバレなしの映画レビューサイト。

サヨナライツカ(2010)

パリでの結婚生活を経て、女優業を再開した
中山美穂が燃えるような愛の物語に挑む

1975年のタイ・バンコク運命的な出会いを果たした男女の25年に渡る愛を描く壮大なラブストーリー。

2002年に作家・辻仁成と結婚後、パリへ渡り、一児の母となった中山美穂8年ぶりに女優復帰を果たして注目された作品です。夫・辻仁成の原作だったことも、大きな話題となりました。

自由奔放で魅惑的なヒロイン・沓子に扮した中山美穂大胆なラブシーンに挑戦するなど、新境地を見せています。

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【ストーリー】
29歳のエリートビジネスマン・豊(西島秀俊)は日本に婚約者の光子(石田ゆり子)を残し、バンコクに赴任します。そこで魅惑的な沓子(中山美穂)に出会った豊は、沓子の誘いに応じ、2人は欲望のままに愛の日々を重ねていきます。
しかし、出世のために光子と婚約した豊は、愛か出世かで迷うことになります。

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家庭生活を優先し、女優業を休業していた中山美穂。洗練されたパリの街で愛する家族と暮らすナチュラルな生き方を選んだことが中山美穂という女優の存在をより進化させたように思いました。

仕事にも家庭にも恵まれた彼女を、公開当時、同世代の私は心底うらやましく思っていました。でも、人生は分からないものですね。。。

バンコクの高級ホテルのスイートルームで暮らし、エレガントなドレスを着こなす美しい沓子は、妖艶な魅力を振りまき、男たちの目をくぎ付けにします。あまりにも完璧過ぎて、この世には存在し得ない幻のような沓子に、中山美穂は軽やかに息を吹き込みました。

男性は沓子のような女性に愛されてみたい、女性は沓子のような美しい女性になってみたい……、きっとそう思うのではないでしょうか。そんな思いに囚われるほど、幻想的な愛の物語へと引き込まれました。

監督は韓国映画私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン西島秀俊は20代と50代の豊を演じ分けるために13キロ増量した後、1ヵ月で15キロ減量するという過酷な役作りを行ったそうです。

豊を翻弄する沓子と、豊を思い続ける光子。豊はどちらの愛に応えるのでしょうか。現実離れした不思議な空気感の中で、「愛と人生」の関係について徹底的に突き詰めた原作のテーマをしっかりと伝え、美しくも切ないラブストーリーを完成させたイ・ジェハン監督の才能も光ります。

25年後に明かされる三角関係の結末。「サヨナライツカ」という言葉の意味が心に深く染みます。


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サヨナライツカ (幻冬舎文庫) [ 辻 仁成 ]