映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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サイン(2002)

ミステリーサークルはなぜ現れたのか
シャマラン流の解釈がある意味、衝撃的なスリラー映画

M・ナイト・シャマラン監督の興味は人の人生を描くことにあるのでしょう。その表現方法をサスペンススリラーの中に見出したことが彼の特異な点だと思います。

シックス・センス』では霊感のある少年、『アンブレイカブル』では不死身の男。シャマラン監督は特殊能力を備えた人間が謎めいた出来事に翻弄される様をスリリングに描き、衝撃的なラストを仕掛けます。

しかし、すべての謎が明かされたときに鮮烈な印象を与えるのは、恐怖よりも人生の指針を見つけた主人公の姿でした。シャマランがオリジナル脚本と監督を手掛けた『サイン』はこの独自の映画スタイルをさらに極めています。

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【ストーリー】
フィラデルフィアの片田舎に住む農夫グラハム(メル・ギブソン)の農場に突如、巨大なミステリーサークルが出現し、以来、彼の身の回りで不思議な現象が次々に起こります。町中の動物が凶暴化し、グラハムは異常な素早さで畑から逃げる不審人物を目撃します。
幼い娘ボー(アビゲイル・ブレスリン)は家中に水の入ったコップを置いて回るという奇妙な行動を繰り返し、息子モーガン(ローリー・カルキン)は物置で見つけた子供用レシーバーで不気味なノイズをキャッチします。

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公開時は前2作の『シックス・センス』『アンブレイカブル』以上にストーリーを語ることが制限され、ラストの秘密保持が徹底されました。でも、「それも無理はない」と思わせる驚くべき光景に遭遇します。

ミステリーサークル出現の謎に端を発したサスペンスから、見えない敵に翻弄される『エイリアン』さながらのアクションへスムーズな移行を遂げます。観終わってみれば実に奇抜なストーリーですが、不慮の事故で妻を亡くしたグラハムの深い喪失感を浮き彫りにするセリフや挿話の数々が生き、荒唐無稽になることを免れました。

不安感を増長させる絵作り、ヒッチコックスタイルのスリラーを彷彿させる強弱の激しいサウンドなど、迫り来る恐怖を演出する腕も冴え渡ります。そして、一級のスリラー作品という以上に、シャマラン流の人生哲学が心に訴えかけます。

人間にとって、人生最大の謎は〈神のみぞ知る〉と形容される“運命”にほかなりません。突然我が身に降りかかった悲劇を前に〈なぜ自分だけが〉と神を呪いたくなることもあるでしょう。

本作でシャマラン監督は自力ではコントロール不能な運命の謎に肉薄し、人生における偶然は必然の産物という答えを、説得力を持って導き出しました。

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