映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

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コレリ大尉のマンドリン(2001)

美しいギリシアケファロニア島を舞台にした
癒しテイスト満載のラブストーリー

ギリシアケファロニア島第二次世界大戦中にドイツ・イタリア軍に占領され、戦後復興の兆しを見せはじめた1953年には大地震に見舞われたそうです。

これら島を襲った2つの悲劇的な史実を背景に、国や立場を超えた人々の絆が描かれます。

イギリス人作家ルイ・ド・ベルニエールのベストセラー小説を、アカデミー賞7部門に輝いた『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン監督が映画化しました。

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【ストーリー】
1941年、戦争を対岸の火事と捉え静かな生活を送っていたケファロニア島の人々にとって、それは突然現実のものとなります。ギリシアアルバニア国境でのイタリア・ドイツ軍との戦いに敗れたために、両軍の占領下に置かれることになりました。戦地で行方不明になっていたペラギア(ペネロペ・クルス)の婚約者マンドラス(クリスチャン・ベール)も復員しますが、かつて漁師をしていた頃の快活さは失われ、イタリア軍への憎しみを燃やしゲリラ的な行為に走るマンドラスにペラギアは戸惑います。
いよいよイタリア・ドイツ軍が島にやって来る日。イタリア軍の行進をやり過ごしたペラギアはその中のひとりの兵士に声をかけられます。驚いて見つめた彼の背中には銃ではなくマンドリンがありました。
一方、島の医師イアンニス(ジョン・ハート)はイタリア軍将校を宿泊させるよう命令されます。やって来たのはマンドリンを背負ったコレリ大尉(ニコラス・ケイジ)。ペラギアはイアンニスの娘。これがふたりの出会いでした。

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歌と音楽をこよなく愛するイタリア兵コレリ大尉と、明るく穏やかなコレリに惹かれていく島の娘ペラギア。しかし、敵兵への愛など許されるはずはありません。

そんなふたりの複雑で、もどかしい恋模様が流麗なマンドリンの調べや浜辺のオペラ、星空の下のダンスなど、ロマンティックな音楽や情景の中で育まれてゆきます。

立場の違う2人が言葉では言えない愛情を、さりげないしぐさや態度で明らかにしていく様子が素敵です。

演技派ニコラス・ケイジと、マッデン監督が惚れ込んだ無垢で自然体の演技が魅力のペネロペ・クルスという対照的な演技スタイルを持つふたりの、駆け引きを楽しむような演技にも注目です。

実際にケファロニア島で撮影された牧歌的な景色も美しく、全編癒しテイストが満載です。

しかし、マッデン監督はただきれいなだけの映画で終わらせません。

終盤、たたみかけるように起こる悲劇によって変貌する人間の姿に肉薄し、月並みでも、生きることの素晴らしさを切々と訴えかけていいます。

緻密に練られたセリフを軽快なテンポで積み上げた賑々しい『恋に落ちた~』とは対照的に、やや緩慢とも思える穏やかさで物語は展開しますが、マッデン監督の才能と感受性の豊かさに改めて驚かされました。


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コレリ大尉のマンドリン (字幕版)